20.打ち切り ページ21
マッケンジー邸…――＜シエルside＞
アダムの瞳を僕は真っ直ぐに見つめ返した。
黄緑色の瞳からは、根拠のない余裕しか読み取ることができない。
シ)「言ったはずだ。僕は興味本意で貴殿の領域に足を踏み入れているわけではない。
女王の憂いを晴らすため…それは貴殿のご息女を見付けることにも繋がる。
そのためにはAの存在が欠かせない」
ア)「つまり、どうあっても譲らないということですか?」
シ)「ｸｽｯ))事件が解決したらいつでもお譲りしよう」
ア)「ッ。彼女は貴方の所有物ではない」
そう言ったアダムの声からは、微かに不快感にも似た怒りが滲み出ていた。
シ)「貴殿の所有物(もの)でもないだろう?」
僕は机の上に置かれた紅茶を一口飲むと席を立った。
ア)「どちらへ?」
シ)「どちらも譲らないのなら話していても埒が明かない。これ以上の対談は無駄なようだから僕は失礼させて頂く。
？」
ふと、窓辺にある小さな写真立てが目に入った。アダムとジョルジュ…そしてジョルジュの腕には、子供が抱かれていた。2才くらいだろうか?
だがそれよりも僕の目を引いたのは、不自然な線だった。ジョルジュの腕を両断するように、勢いよく破られたような歪な線が走っていた。
──ﾊﾟﾀﾝ
シ)「?」
僕の視線に気づいたらしい。レオナルドは平然とした顔で、写真たてを伏せた。
シ)「……行くぞ」
セ)「御意」
見送りを断ると、僕は屋敷を出て馬車に乗り込んだ。
セ)「めぼしい収穫はありませんでしたね」
シ)「ああ。アダムも裏社会で力を持っている分、厄介だな」
迂闊に手は出せない。
それどころか状況はすこぶる思わしくない。
ジョルジュの真意も、事件に繋がりそうなことも何も聞き出せなかった。
そんな中で分かったこと…疑問があるとすれば…──
セ)「それにしても…彼はなぜ、Aさんに固執するのでしょう?」
シ)「僕もそれは気になる」
──『ジョルジュはアレの危険性を知った上で恐れている…』
恐れる?なぜ?
シ)「しかし…アダムと話した後には、どうあってもAを渡すのは危ないな」
セ)「なぜ?」
シ)「アダムに渡れば顛末が決まるからな」
僕の言葉の意味を理解したのか、あぁ…と相槌をうつセバスチャン。
シ)「息はあったのに、死者と同じ地下に置かれていたんだ。助けたければそうはしない」
セ)「アダム様は彼女が生きることを望んでいなかった…」
シ)「つまりアダムの手に渡ればAは間違いなく死ぬ」
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