15.アダム・マッケンジー ページ16
朗々とした声と共に扉が開かれる。
こじんまりとして華やかさに欠けてはいるが、落ち着きのある応接室だ。
向かい合わせになったソファの一角に、婦人が腰掛け、その傍らに当主と思わしき男が座っていた。
ア)「初めまして。僕が当家当主、アダム・マッケンジーです」
よくお越しくださいましたね、と微笑んだ顔は、思ったよりも若く、整ったものだった。
色白の肌に、サラサラとした黒髪、そして緑のような黄色のような…特徴的な色の瞳がやけに特徴的だ。
シ)「(あの目…どこかで…)」
セ)「………」
人の良さそうな雰囲気を放つこの爽やかな大人らしい好青年に、「死神」なんて言葉は、とても似つかわしくない。
シ)「シエル・ファントムハイヴです。急な申し出を受けていただき、ありがとうございます」
互いに握手を交わしてから、アダムに促される形で席についた。
目の前には、相変わらずにこやかなアダムと、それとは対称的に、目をこぼれんばかりに見開いた当主夫人…ジョルジュがいた。
ア)「? どうしたルージュ?顔色が悪いが…」
ジ)「! な、何でもありませんわ…!」
慌てて顔を剃らした夫人は、緊張しているのよとぎこちなく付け足すのだった。
ア)「気分が悪いなら無理はしないでいいよ。風に当たっておいで?」
ジ)「でも…」
ア)「仕事の話しだ。僕一人に任せて。お前は楽にしていて良いから」
ジ)「………ええ」
青い顔で渋々退室した夫人を見送ると、執事が紅茶を淹れ始めた。この香りはペコか…悪くない。
ア)「突然すみません」
シ)「いえ、急を言ったのは此方ですから」
ア)「とんでもない。昨日もわざわざご足労いただいたのでしょう?」
何?
ア)「妻から聞きました。僕が不在だったばかりに大したもてなしも出来ず申し訳無い…」
僕はそう言うことか、と夫人が出ていった扉を見た。あの夫人、独断でアンダーテイカーを呼んだんだな?
だが使用人全員の目を欺けるはずなどない。誰かに目撃され、旦那の耳に入った。大方、苦し紛れにウチの会社の名前を出したらまさかの的中…と言ったところなのだろう。
シ)「(しかしお陰で難なくここまで来れたんだ。話を会わせておくか…。)
いいえ、お気遣いなく。無理を言ったのは此方です」
ア)「そうですか…。では、1つだけお伺いしても?」
シ)「?」
アダムは改まったように座り直し、にっこりと微笑んだ。
ア)「“番犬”が“死神”に何の用でしょう?」
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