虫の知らせ ページ43
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明朝、刀の研磨が終わって里を後にした。隠の人には八幡様の神社がある町まで運んでもらった
社に続く長い参道を歩く。先程までの晴天から、雲行きが怪しくなってきた
『雨が振りそう・・・急ごう』
小走りで向かうと、ぽとりと足下に鍔に付けていた筈の御守りが落ちた
『・・・・・・切れた』
___嫌な予感。胸騒ぎがする・・・
御守りを拾い上げると同時に、ランが来た。いつもの定位置ではない、御守りが落ちてる其処で一声鳴いた
「死亡!!煉獄杏寿郎、死亡!!
⠀上弦ノ参ト格闘ノ末、死亡!!」
崩れるように両膝を着く。地面にポタポタと丸く、雨粒の染みが落ちて、それからは一瞬で雨音しか聞こえなくなった
大粒の雨が体を打ち、項垂れた髪から伝って流れる水滴が弱まる・・・ーー
『ーー?』
「・・・・・・」
庇うように亀甲柄の羽織が頭上に広がっている。私が此処に居る事を唯一知る、その特徴的な羽織の主の表情は見えないが、いつもと変わらず冷静だろう
『・・・煉獄さんに贈れなくなっちゃいました』
「・・・・・・」
『自分が出陣するのに、私にってくれたんです』
「・・・・・・」
『だらしない所、冨岡さんに見られました』
「・・・・・・」
『・・・何とか言って下さいよ』
気丈に立ち上がると、雨よけに広げてくれていた左腕を冨岡さんは、ゆっくりと下ろした
「無理しなくて良い」
『こんな時に優しい言葉かけるのは反則です・・・』
「・・・ここには誰も居ない」
そう言って、冨岡さんは私に背を向けた。ただ黙って立つ彼の背に、額を当てて瞳を伏せた
___煉獄さんの笑顔が瞼の裏に浮かぶ
最初の涙がこぼれてしまうと、あとはもう止めど無かった。顔を両手で覆い、声を出さずに肩を細かく震わせて静かに泣いた。
自分が泣いていることを、誰にも気取られたくないという気持ちを、温かくて大きな柱が支えてくれた・・・
___通り雨が過ぎ去り、日の光が訪れる
父を、カナエさんを、煉獄さんも失った哀しみは去らない
変わりに訪れるのは、怒りと衝動だ____
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有馬(プロフ) - 常田。さん» コメントありがとうございます!同じ作者の方に、そう言って頂けるとは・・・!とても光栄です!更新頑張りますので、宜しくお願いします! (2019年10月14日 16時) (レス) id: 3c182f7e4d (このIDを非表示/違反報告)
常田。(プロフ) - 突然のコメントをお許しください。このお話、とっても面白くてハマってしまいました!不死川さんも富岡さんも推しキャラだから、もうヒィヒィですよ!応援しています!更新、楽しみにしていますね! (2019年10月13日 23時) (レス) id: 89f5f989ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有馬 | 作成日時:2019年9月21日 15時