24: 彼の世界 ページ25
雪には相手が何を言っているのか理解できなかった。
「雪君、私は__君を救いたと思っている。」
救いとはなんなのか。
「君が、それを求めていなかったとしても……。」
何を言っているのか。
__一体、自分はなんなのか。
気が付けば、あの夜のように彼を押し倒していた。
軋むソファの音も、相手の困惑する顔さえも。もはや雪には常軌を逸していた。
相手には、自分がそんなにかわいそうに見えたのだろうか。こんなに幸せなのに、一体何が間違いだというのか。
救いなんて、欲しくない。救われるほど不幸じゃない。相手が何を言っているのかわからない。
「…ゆ__」
重ねた唇は、一瞬で離れた。
離すと同時に、理解しがたい思いが生まれた。
ただの行為、の、はずなのに。
どうしてこんなに苦しいんだろう。
寂雷の呆然とした顔も、どうしてこんなに痛いのか。
温かい頬の感触も、ただ虚しくてたまらないのは。
そうだ。
救いが欲しいわけじゃない。相手が何を言っているのかわからない。
ただ、こんな風に温かい日々が続けばいいのに。
この人の温もりに、ずっと触れていたい。そんなことを考えてしまっただけだ。
これ以上の罪があるだろうか。
家族といる以上に…なんて、最低だ。
それでも
貴方のために犯す罪なら、きっと
自分だけには、赦される。
「おれ、は…あなたのそばに、いられたらって、思う……どうしたら、いいですか…。」
震える声。濡れた瞳。神への懺悔にも似たそれに、寂雷は目を伏せる。
「それは、君が歪んだ愛を教えられたように、私が君に刻み付けてしまったものなのかもしれないね。」
後悔のにじむ声。しかし優しい手つきで雪の頭を撫でた。
雪はその心地よさに、また罪悪感が増していくのを感じる。
「…そうだね。」
ポツリと、雨垂れが落ちるような呟き。
雪は寂雷の一言一句を聞き逃さない。
128人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Last(プロフ) - カナリアさん» ありがとうございます。僕自身も今作の主人公はお気に入りです。これからも堪能していただければと思います。 (2018年12月28日 12時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 主人公くんが可哀想で可愛くて個人的にダイレクトでした…… (2018年12月27日 22時) (レス) id: 90bd7d6cd5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Last | 作成日時:2018年11月24日 20時