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9. xoxo (2) ページ9

テレビをつけると、ちょうど朝の占いが始まった。
誕生月占い。

「えっと、寂雷さんの誕生日は、1月!」

うつし出された結果を見て、オレは急いで着替える。ズボンの裾に惑わされながら、転がるように外に出て広い背中を追いかけた。



「寂雷さん!」
「ん? ああ、どうしたんだい明智くん。素足じゃないか。怪我をしてしまいますよ。」
「はいこれ!」
「ええと……なんだい、これは。」

素足でぺたぺたと駆けてくる明智を抱き留めた寂雷はぬっと突き出された明智の手にある、ストラップらしきものに目を向ける。
秋風が冬へ向けて駆けだす季節。明智は真夏の太陽のように笑った。

「オレン(ジン)!」
「おれんじん…?」

おずおずと受け取ったストラップはオレンジの頭と妙にリアルな人型の体を持つ奇妙な造形をしている。

「今日の最下位は1月生まれのあなた、深読みしすぎてから回りしがち、まずは目の前のことをひとつひとつこなしていきましょう。ラッキーカラーはオレンジ!」
「占いかい?」
「そう。寂雷さんにあげる!」

占いが最下位であることは複雑だが、順位付けをするなら最下位は何にだって発生するものだ。明日は明日の風が吹くように、明日になれば結果も変わる。一喜一憂して真に受けるものではない。
何が心を動かすかと言えば、どうしようもない同居人が自分のために駆けてきたことだ。

胸の奥が優しくまたたく。明智の行動はいつだって寂雷を微笑ませる。
急いで走ってきたのだろう。寝起きのまま、少し跳ねた髪にうしろまえのシャツ。

「ありがとう。」
「えへへ、いってらっしゃい。」

二度目のいってらっしゃいはしっかりと目を合わせて。
温かい水分を含んだ瞳が今度は木漏れ日のように寂雷をとらえる。

心の色が見えるなら、きっと彼の色は優しく温かい色をしているのだろうな。

ロマンチックなことを頭の片隅で考えて、寂雷の手が明智の肩に触れる。
埋まる距離。逸れる視線。少しかさついた唇が明智の額へ押し当てられる。昨夜のように。

「いってきます。」

ゆっくりと離れて、背を向けて。
寂雷の背が遠ざかる。人のいない駐車場。

「ン…?」

あまりに自然な動作に明智は混乱するまで数秒かかった。
寂雷とは居候と家主の関係で、決して恋人とか片思いとか、そんな煩わしいものではなかった。
心臓が知らない音を奏でた。もしくは、心臓とは別の場所が。

「…やってしまった。」

寂雷が頭を抱えていたことは、さておいて。

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作者名:Last | 作成日時:2021年11月14日 1時

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