神宮寺寂雷とヒモ男 (ページ7)

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7. nite nite (2) ページ7

一瞬見えた冷徹な目。今は見る影もなくしょぼくれたゴールデンレトリーバー。

「跡にはなっていないね、よかった。それでどうしたんだい？」
「寒いから入れてもらおうかなーって。」
「きみは…いや、どうぞ。」
「えへへ、おっじゃましまーす。」

さっきまで寂雷さんが入っていた布団はやっぱり暖かくて気持ちいい。端の方に寄ると、大きな手が、数分前と打って変わって優しく俺の腹部に回った。

「落ちてしまうよ、こっちへおいで。」

ぴったりくっつく体。オレより広い肩幅。うとうとしてきたところで、つむじの真後ろから声がかかる。

「きみは実に不思議だな。」
「んー、ふふ、なにが？」
「私はきみに無体を働いたのになぜ、こうも無防備になれるかな。」
「むたい？」
「暴力や乱暴だね。あれは…きみへのものではなかったけれど、確かに私は…」
「じゃあ…こんごのアニマルセラピーにきたいってこと、だ」
「アニマルセラピー、ね。」

くるりと体を捩って、寂雷さんの顔を見る。薄暗い中でも下がった眉がそこに見えた気がした。
オレは寂雷さんの背に腕を回してとんとんとリズムをとる。

「ゆっくり、ねむれますよーに。」
「…きみもね、明智くん。」

瞼が重くてもちあがらない。頭がぼやけて、深く落ちていく。
最後に額が涼やかになって、ちいさなぬくもりがそこに宿った。