【ヒプマイ】 シークレット・バース 【男主】

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「悪い話ではないと思うのだけれど」



無表情で淡々と
神宮寺先生は話す

どうしてそんな、コンビニに行くような感覚で、付き合ってみようかなんて言えるんだ
そんなの、最初から気持ちが無いってわかってしまっているじゃないか

あり得ないとわかっていても
月貴は、少女漫画のような恋を迷妄してしまう


しかし


そんなものは存在しない
相思相愛なんて現実ではほとんどなく、ましてや同性なんて

そう
今までの経験上気持ち悪がられて終わり


だからこそ気持ちが無いことが辛かった



「でも、俺は…」
「もし君が断ったとして、その後君はどうするんだい」



どういうつもりで
そんなことを言うのか



「簡単に他の人を好きになれるのかい？だったら私も無理にとは言わないけれど」



この人の「付き合う」がもし俺に対する優しさだとしたら
酷い毒だ


昔好きな人がいた
大好きだった
記憶から抹消しようとしたけれど、今でもこうして思い出す

恋愛ドクトリンなんて存在しないから
こんなに苦しんでいるんじゃないか




「…馬鹿に、しないでください。俺は興味本位で人を好きになったりしない」




声を荒げ、周囲の人の視線が刺さる
神宮寺先生は驚いたように目を見開き
そして笑った



「そう…なら、良かった」



柔らかい微笑みが
ああ、好きで


さっきまで抱いていた怒りと
過去の苦しみが
どこかへ行ってしまうから不思議だ


毒が全身に回ってしまったのではないか
中毒症状を起こしそうな劇薬だ



「君がそういう子だと思ったから、私は君を追いかけてきたんだ」



先生は、実はよっぽどの策士なのかもしれない
俺の存在しない臓器に杭を打って、脅迫みたいに「返事は？」と聞く



ここで断るほど俺が捻くれた人間だったら
もっと傷つかない生き方ができたのかな








秘密が増えた


俺は、あの神宮寺寂雷先生とお付き合いしている

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