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渡し忘れていた？違う
渡せなかった
君には私がいる、だなんて
脅迫も甚だしい
彼にではない
自分自身に言い聞かせるための言葉だ
彼のためを思うなら、渡さなくてはならないと
そんな大人としてのちゃちなプライドだ
本当は、彼のことなど微塵も考えてはいないのではないか
それでも、彼は
私のことをあんな目で見てくれるから
＿
先生は遅刻していないだろうか
俺は午後勤務だから、むしろ時間がありすぎて困る
たった一日
されど一日
いや、怒涛の一日だったな…
まさか、先生の家で一夜を過ごすことになるとは
＿と、現実逃避気味に昨夜のことを思い出して赤面してみるも
手の中にある、紙のざらついた感触は消えてくれない
過去の清算？
今更向き合うくらいなら、いっそのこと過ちとして片隅に押しやっていたかった
これ以上何を言うことがある
俺は銃兎の気持を考えず、銃兎は俺を拒絶した
これ以上の事実なんて必要ない
無理だ
忘れてしまえ
無かったことにしよう
お互いのために
向き合うことが怖いだけ
それを見透かして、先生はあんな言い方をしたんだ
『彼は君との過去を清算したいようだよ』
格好悪くたって、怖いものは怖い
『君には私がいる。だから、大丈夫』
いざという時の逃げ道すら残してくれるんだ
俺が助けを求めた時
先生がそれを笑って受け入れてくれる保障なんて、どこにもない
けれど、もし
もし俺がこのまま何もしなかったら
先生は俺を見放すだろうか
「……もしもし？」
4コール目で
その声は反応した
汗ばむ手
今からでも逃げ出したい
電話口の相手は、俺の言葉を待っている
「…もしもし、俺…だけど」
…間違えた、なんだ俺だけどってオレオレ詐欺かよ
非通知なんだから俺が誰かなんてわからないだろ！！
焦って次の言葉を模索するも
どうやらその必要はないらしかった
「……月貴、か？」
「えっ、あ…うん…」
気まずい沈黙
俺は耐え切れなくなった
「…ご、ごめんこんな平日の昼間に。一応、休憩かなと思ったんだけど…忙しいなら、切る、し…」
「いや…その」
控えめな声
今すぐ切りたいのに
過去の遺物というやつだろうか
ちょっとした声の機微だけで
拒絶されていないことを察してしまう
「かけてくれると、思わなかったので…」
ほっとしたような柔い声が
縫合した傷口を抉るものだから
痛い
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Last(プロフ) - いおさん» ありがとうございます。詩的な表現に気を遣っていたのですが、そう言っていただけてとてもうれしいです。完結までよろしくお願いします。 (2019年6月1日 21時) (
レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - 素晴らしすぎる作品ですね…!続きが気になり過ぎて堪らないです!!文章も綺麗で、何から何まで素敵な作品です…!!これからも頑張ってください…!! (2019年5月28日 23時) (レス) id: 1d7aa46e15 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 彩華さん» ありがとうございます。お話も割と終盤ですが今後も楽しんでいただけるよう頑張ります。 (2019年5月26日 15時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - しんどい…好き…めっちゃ心抉られるくらいキュンときます…俺的にはどストライクすぎます。作者さん好きです（） (2019年5月25日 0時) (レス) id: 3d53cc1cd6 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 腐女神さん» ありがとうございます。完結まであとわずかですが今後とも気長に待っていただけると幸いです。 (2019年5月19日 2時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Last | 作成日時：2019年4月27日 1時
