【ヒプマイ】 シークレット・バース 【男主】

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「今日は肉じゃがに挑戦しようかと思ってね」

「へ、へえ…」



とんとん拍子で先生のお家にお邪魔してしまったわけだが
物は少なく
清掃が行き届いていて綺麗だ
そして広い


…肉じゃが
案外家庭的なものを作るんだなあ


不覚にも
可愛い
とか思ってしまったり



「作っている間、くつろいでくれて構わないよ」
「あ、いえ…お手伝いしますよ」



ぶっちゃけ曲がりなりにもお付き合いしてる人の家で
何もしないでくつろぐとか難易度高い、し…

いやもしかしたら邪魔くさいから待ってろってことかもしれない
「ふふ、じゃあお願いしようかな」
あああ好き

＿


「包丁使い、上手だね」
「一応自炊はするので」


人参を乱切りする彼の手さばきはなかなか見事で頼りになる

思わず夕食に誘ってしまったが
迷惑ではなかっただろうか

あの時
彼は
泣いていた

…ように見えた



なにか悩みでもあるのだろうか
放っておけない

けれど、彼に直接
悩みがあるなら聞くよ
といったところで逃げられそうだ

恋人、とはよく言ったものだ

所詮、かりそめの関係というわけか





落し蓋をして煮込んでいる最中のことだった

ふと、今まで黙りこくっていた彼が口を開く



「先生」



少し驚いて、その横顔を見つめてしまう
案外子供のような顔立ちをしているのだな



「なんだい」



警戒心を与えないように、極力笑顔で接する
彼の顔には影が差している



「付き合ってる…んですよね。一応」



まさか彼からそんな確認をされるなんて
驚いた




「いや」




どうしてこの子には
こんな意地悪をしたくなってしまうのだろう

彼は顔をばっと上げる
不安そうな瞳
呆然としていて
泣かせてしまう前に言わなくては




「一応、ではなく、お付き合いしているんだよ」




自分の心の裏側で
小さく謝る

興味本位で付き合ってみようかと
そう
君の本気を裏切っている罪悪感


彼は安心したように笑うから
黒い淀みが増す



「すみません」

「どうして謝るんだい」



謝りたいのは、こちらの方だというのに



「恋人っぽいこと、なにも、できなくて」



顔を赤くして
これが演技なら、役者になれるだろう

やめてほしい

また

からかいたくなってしまう




「…じゃあ」




彼の腕をとり

腰にもう一方の腕を回す

ぐっと距離が縮まり


呆けた顔の君


色の揺らぐ瞳


綺麗だ






「『恋人っぽいこと』してみるかい？」

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