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「ムッちゃんの好きな物？」
「そう」
一二三に問うと、お節介な笑みを向けられる
そういえば、彼らには既に知られているのだっけ
「先生、ムッちゃんとなんかあったんすね」
「…喧嘩をしてしまったんだ」
大人ぶって些細なこと、と言いかけた口を噤んだ
一二三はそれを聞いて驚いているようだ
「先生って人と喧嘩とかするんすね！」
「…それで、なんとか仲直りしたいのだけれど、彼の好きな物を用意しようと思って…協力してくれるかい？」
「モチのロンッすよ」
強引に話を戻したが、一二三は気にしていないようだった
それにしても、一二三は、月貴の好きな物と言われてすぐに思いつくのだろうか
「えーっと、ムッちゃんが好きなもんは」
頭のメモ帳を用意する
仲直りしたいのは本心で、悪いことをしたとも思っている
「クロワッサン、ツナパン、甘口ビール、それと肉より魚派。食いもん以外ならシルバーのアクセとか、あと映画！確か、最新作が出るなんとかっつーSF映画の一作目がすっげー好きで＿」
「ちょ、ちょっと、待ってくれないかい…」
衝撃
まさかここまで情報があるとは
本当に私は、彼について何も知らない
…というか、SF映画の一作目？
「その映画というのは…」
「ああ、前友達と見に行ってすっげー好きっつってました」
その友達というのは、彼が好意を抱いていた…
そして現在の、彼の友人
彼が今になって尚忘れられない相手
独占欲と嫉妬
「そういや、最新作見たいって言ってたんで、今度独歩も誘って行こうって言ったら」
私は彼を見ていただろうか
私は彼のことになると、いつも、自分のことで一杯だ
だから
「先生と行くって約束したんだって、嬉しそーに笑ってましたよ」
大切なものを見落としてばかりだ
「…そっか」
「つか先生、ムッちゃん…月貴のこと、全然なんも知んねーんすね」
一二三は悪気が無くても言葉に棘があることが多いが
今日ばかりは真剣な顔をしていた
まだ何もできていなかった
利害の一致と見せかけた不平等な交際
彼の思いを踏み躙り、傷つけた
彼はこんなにも私を思っていてくれた
あんなことを言っても彼は、私を好いていてくれた
「そうだね、私は彼について何も知らない」
私も、君でさえも決めつけていたこの関係の終末
今までの全て、偽りだったと
偽証することなんてできない
「早く、仲直りをしなくてはね」
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Last(プロフ) - いおさん» ありがとうございます。詩的な表現に気を遣っていたのですが、そう言っていただけてとてもうれしいです。完結までよろしくお願いします。 (2019年6月1日 21時) (
レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - 素晴らしすぎる作品ですね…!続きが気になり過ぎて堪らないです!!文章も綺麗で、何から何まで素敵な作品です…!!これからも頑張ってください…!! (2019年5月28日 23時) (レス) id: 1d7aa46e15 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 彩華さん» ありがとうございます。お話も割と終盤ですが今後も楽しんでいただけるよう頑張ります。 (2019年5月26日 15時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - しんどい…好き…めっちゃ心抉られるくらいキュンときます…俺的にはどストライクすぎます。作者さん好きです（） (2019年5月25日 0時) (レス) id: 3d53cc1cd6 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 腐女神さん» ありがとうございます。完結まであとわずかですが今後とも気長に待っていただけると幸いです。 (2019年5月19日 2時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Last | 作成日時：2019年4月27日 1時
