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好きなんです、
と
続いた言葉を反芻している
部屋で独り
見慣れた風景だった
一人には慣れているはずなのに、どうして
だらしなく背もたれから垂れた長髪
上を向く寂雷の瞳には電灯の光が煌々と反射している
体が酷く重かった
彼がいなくなったとたん、自分しかいないことが、妙に大きく思える
なんてことをしてしまったのだ
今更考えたって遅い
時間を切り取ることができるのなら、最初からやり直したい
否
いっそ、彼との出会いすら、無かったことにしたい
私は彼を、誘蛾灯のように誘惑し
あまつさえ捕虫器に突き落とした
何を言えたというのか
どんな言い訳をしたかったのか
何が違うんだ？
欲望のまま、ただ自分の醜い人間的な部分を晒し、彼を殺したのは
私だ
今夜は、焼き切れた君の破片を抱いて眠る
＿
借りてきた猫みたいに縮こまる青年は、自分の額を膝にこすりつけた
閑静だが、統一感のある部屋は
専ら青年＿月貴の趣味ではなかった
だからこそ、落ち着く
独りでいたら、発狂しそうだ
喉を掻き毟るような思いで転がり込んだ先にいた男は、小さくため息をつきメガネのブリッジをくいと上げた
「…ごめん銃兎。急に押しかけて」
「それは構わないが…どうしたんだ？電話でも元気がないようだったが…」
一向に顔を上げない月貴に、いよいよ銃兎は焦る
だが、暫くして月貴は顔を上げる
腫れるまではいかないまでも、林檎のように赤い目元に銃兎はギョッとした
「お、おい月貴…本当にどうしたんだ？俺にできることなら、なんでも＿」
「銃兎」
掠れた声が、とても聞いていられない
何か辛いことがあったのだと安易に想像できる
それでも
辛そうに、哀しそうに目を細めた後
月貴は笑った
「俺、付き合ってる人がいるんだ」
その告白は、映画でも見ているようで
恥ずかしくて見ていられない気持ちと、水底に沈んだような息苦しさ
「そうか」
和解した記憶の断片が意地悪く
しかし、男か？なんて聞けるはずもない
どうすればいいのか呆然としていても尚
月貴は容赦なく、今度は自嘲気味に笑った
その笑顔が、赤紫の目が綺麗だった
「付き合ってるって、恋人だって思ってた。けど、向こうは違ったみたい」
安全な基盤など存在せず
いつだって、不安定な梁の上で独りでバランスをとっていただけ
落ちたのか潰れたのか判断もつかぬまま
「喧嘩して、逃げてきちゃった。ガキっぽいよな」
安全基地に逃げる
最低の男だ
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Last(プロフ) - いおさん» ありがとうございます。詩的な表現に気を遣っていたのですが、そう言っていただけてとてもうれしいです。完結までよろしくお願いします。 (2019年6月1日 21時) (
レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - 素晴らしすぎる作品ですね…!続きが気になり過ぎて堪らないです!!文章も綺麗で、何から何まで素敵な作品です…!!これからも頑張ってください…!! (2019年5月28日 23時) (レス) id: 1d7aa46e15 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 彩華さん» ありがとうございます。お話も割と終盤ですが今後も楽しんでいただけるよう頑張ります。 (2019年5月26日 15時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - しんどい…好き…めっちゃ心抉られるくらいキュンときます…俺的にはどストライクすぎます。作者さん好きです（） (2019年5月25日 0時) (レス) id: 3d53cc1cd6 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 腐女神さん» ありがとうございます。完結まであとわずかですが今後とも気長に待っていただけると幸いです。 (2019年5月19日 2時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Last | 作成日時：2019年4月27日 1時
