通り雨、過ぎれば晴れ【N.K】 (ページ5)

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彼が降りた駅は、渋谷とか銀座に比べたら全然だけど、地元では有数のネオン街で、とても煌びやか。

紫にゴールドの刺繍が入ったドレスを着たような女性がたくさんいる街。

私みたいな青シャツに白のフレアなんて人は到底入れないようなところ。

彼はそんな駅に降りた。

だからこんなにキメて来てるのか。と辻褄があったように感じた。
少し緊張して改札を通ると、私が思い描いていたより随分と落ち着いた街が見えた。

私みたいな格好の人だってたくさんいた。
普通の居酒屋や雑貨店。
そんな商店街じみたこの街を彼は見向きもせず通り過ぎていく。

相変わらずのクール男子。

そんな彼がこの街に何をしに来たのか、私は一瞬で分かってしまった。

彼の向かう先は路地にある集合ビルの三階。
デカデカと輝く「嵐」の文字と、そこを出入りする酔った女性と少しチャラい男性から予測できた。

彼は "ホスト" なんだと。

生まれてから1度たりともそんな不純なところに入ったことなんてないし、これからも入る予定なんてサラサラなかったのだけれども、

今ここで帰ってしまったら、私はここまで来た意味がなくなってしまう気がした。

恐る恐る、「嵐」へと足を踏み入れた。