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私は始発電車に揺られて、15駅離れたところまで行く。
快速でも準急でもなくて、普通電車に乗りたい。というのが私のモットーだから。
小さい頃から私は、電車が好きだった。
線路の上を駆け抜ける電車は色とりどりで、どこまでもまっすぐ走ってゆく。
大きくなったら、そんなふうに誰でも自由に生きれるのだと思っていた。
でも、現実はそれほど甘くはなかった。
私は町工場で働いている。
もちろん、初めからこの職場を希望した訳では無い。
私は都内の某A大学に通うエリート女子大生だった。
容姿端麗、単位だって落とさなかったし、先生、学生からの支持信頼も厚かった。
すべてが順風満帆、世界は私を中心にゆっくりと回っていた。
いつからだろうか、事態が一変したのは。
いいや、あの時のことなんて思い出したくもないのだ。
あの記憶が蘇るたび、私は苦しくなる。
お腹の古傷が、ズキズキと脈をうっていく。
街を蒸しあげるかのような湿度の高いあの日、私の人生の歯車は大きく狂い出した。
たくさんの面接を受けた。
そしてたくさん落ちてきた。
やっとの思いで見つけた就職先は、プラスチックの部品を作る町工場だった。
労働時間が長い割に低賃金。
世にいう ｢ブラック企業｣ なのかもしれない。
でも、そこで働く人は皆、生きることに必死だ。
それに、現場長はとても従業員に優しいし、みんななかがよい。
でもたまに、みんなの顔が曇ることがある。
きっとみんな、言えない何かを隠し持っている。
私はこの職場は嫌いじゃない。
同僚も、1人だけいる。
彼の名前は、松本潤。
この町工場のアイドル的存在で、気配り上手。
おまけにイケメン。
しかも彼とは高校からの同級生で、かれこれ9年の付き合いになる。
そんな彼は、
私の初恋の相手。
そして、初めて付き合った人。
初めてのキスの相手。
あと、ハジメテの相手。
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作者名：ななめ28° | 作成日時：2018年7月11日 21時
