虎と猫 (ページ5)

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煽動_ ページ5

side:taiga

大我「ただいま」

結局樹とはどこにも行かず、まっすぐ帰ってきた。

大我母「おかえりなさい。Aちゃんから傘、受け取った？」

大我「あ…うん、」

満足気にされると腹が立つ。

俺は、あいつの顔なんかもう見たくないのに、

大我「もうあいつに何か頼むのやめろよ。…姉弟じゃねえんだし」

大我母「快く引き受けてくれたのよ。そういう言い方しないの。あんなによくできたお嬢さんが幼馴染で、大我も良かったじゃな…「やめろよ」

大我「あいつはもう、幼馴染でもなんでもねえよ」

いつもこれだ。

有名な中学校に受かった時も、頭のいい大学に入ったときも、

'よく出来たお嬢さん'って。

そんなんじゃ、ねぇだろ…

自分の部屋に入ると、嫌でも見えるあいつの部屋。

昔はそこで糸電話したりして、俺が一番あいつの事を知ってたのに。

…電話してる、のか。

カーテン越しの影でしか得られない情報に煽られる。

誰と？

相手はどんな奴？

なんの話してんの。

俺にしてたようなどうでもいい話を、

屈託のない笑い声を、

どこのどいつにしてんだよ。

大我「…っくそ」

ベッドに潜り込めば、耳を擽るあいつの声

______京本くん、

大我「なんだよ、その呼び方…」

脳裏から離れないあいつは、

やっぱり忌まわしい。