虎と猫 (ページ2)

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A「…おはよう」

変な夢なんか見た日に限ってこうだ。

今日は歩いて駅まで行こうと思ったから少し早く家を出たら、ちょうど隣の玄関も空いてしまった。

一瞬驚いたような顔をして、すぐ困ったみたいに眉を下げる。

昔からそう。

大我「おはよ。」

お互いにこりともせず、それぞれ反対方向へ進む。

学校につけば彼女がいる。

友達もいる。

長い髪を揺らして彼女が俺を覗き込んでくる。

颯希「大我、元気ないじゃん」

大我「ん…大丈夫だよ」

そういえば、あいつはいつのまにか髪を切っていた。

なんていうんだっけ、ああいうおかっぱみたいな髪型。

樹「大我おはよっ」

大我「んーおはよ」

樹「もうちょい愛想よくしろよー彼女可哀想だろ」

jr.の活動が忙しくなり、転校して一年留年したおかげで樹達と同じクラスに通えている。

ほんと、これがなかったら毎日耐えられねえよ。

授業も上の空で、時間だけが過ぎて行く。

朝のあいつの顔が消しても消しても脳内を巡ってくる。

傾く夕方に、突然雨雲がかかった。

先生「窓閉めろー」

湿気で蒸れ返る教室。

青天の霹靂。

傘なんか、持ってない。

樹「授業終わったぞ」

気付けば帰り支度を終えた樹に頭を叩かれていた。

…これだから、嫌なんだ。

あんな夢なんか見るから。

大我「…飯食って帰ろうぜ」

少し驚く樹を尻目に、俺は足早に学校を出た。