せんせい と ふたりきり 【 こ.ろ.ん 】

＊ 43 話 ＊ ページ44

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この時期になると夕方には涼しい風が吹く


あんなに元気だった蝉も夏の短い生涯を終えたのか最近は静かだ

ないと寂しかったりするもの。



「 病院行けよ。悪化したらまずいし 」


『 うん。すぐ治るかなぁ 』



足を引き摺らせる私に合わせていつもよりゆっくり帰路を歩く。

それにしても今日の彼は口数が少ない。


話題を振るのが苦手な私の為にいつも率先して話題をくれるのは彼



「 Aはさ、卒業後どうすんの？ 」


『 んー、フリーターにでもなるかなぁ 』


未来予想図が上手く構造でてないから先の事なんてまだ何もわからなくて真っ暗

進学した方がいいよ なんて言葉は耳がタコになるほど聞いてきて、頭がパンクしてくる。



「 相変わらず適当だなぁ。…俺さ、高校卒業したら 」



「 アメリカ行くんだ 」



頭が良い彼の事だからきっといい大学に行って就職するんだろうと思ってた。

予想外な言葉に脳の機能が停止するような感覚に陥る、アメリカってここからどれぐらい？

何時間で着く？いくらかかる？



「 スポーツ留学、したくて。先生に言ったら、お前なら行けるって 」


『 スポーツって、向こうでもサッカーするの？…でも、さとみくんサッカーは趣味だからプロになる気ないって言ってたじゃん 』



引き止めたいんだか、行ってほしいんだか自分でも訳が分からない。

突然規模のでかいことを言われて動揺を隠せないだけ。


「 うん。でも、ちっさい頃からの夢で……、簡単に諦められなかった。だからさ、Aにお願いがある 」


『 ……はい 』


彼の顔が見れなくて地面をじっと見つめる。

心は泣きたがってるのに、全く出そうにない。


薄情者、行かないで ってなんで言えないんだろ。




「 Aに、一緒に来て欲しい。そばに居てくれるだけでいいんだ 」






『 考えさせてください 』



逃げるように走る

今日は暑いはずなのに風が冷たく感じてヒュッと痛くなる。


考えない、たくない。




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