忠告 ページ9
「逃げ惑う人々の流れに押され、結果Aさんの傍を離れてしまったこと、心より深く御詫び致します」
深々と父の前で頭を下げる彼に嫌悪感を覚える。
ものは言いようね。
私を置いて一目散に逃げたのに。
「気にせずともよい。娘は怪我一つなく無事だったし、勇作くんはその後、市民の安全確保に全力で当たったそうじゃないか。実に立派だ。益々気に入った」
「ありがとうございます」
機嫌良く笑う父に愛想を振り撒いているその姿に「滑稽だわ」と心の中で嘲笑った。
「しかし、女の通り魔とは珍しい。街の人間は皆怯えている。1日も早く捕えなければ…」
「お任せください。今度会ったらこの私が必ず捕えて見せましょう」
「頼もしいな。それでこそ柏原家の婿だ!」
*****
父の書斎を出て勇作さんと並んで歩く。
「良かったのですか?」
「何がだ?」
昨日の件は、“女の通り魔”として片付けられた。
まるで雪乃の存在が無かったかのように、その名前が出ることはなかった。
「いえ、何も」
また彼の癪に触ることを言って機嫌を悪くされても困るので、口をつぐむ。
『貴女は狙われている。あの男もそうだ。今すぐ保護を受けるべきだ』
それでも、昨日の義勇さんの言葉が忘れられない。
もし彼の言っていたことが全て本当で、彼女が鬼となって人をあやめて生きているのだとしたら、私たちの身はとても危うい事になる。
「勇作さん、…あの通り魔は私たちを狙っているそうです」
「そうかもな」
「私を助けて下さった方がおっしゃっていました。彼女はもう私たちの知っている人物ではありません。どうかお気をつけ下さい」
その言葉に彼が立ち止まる。
「…僕が負けるとでも?病を抱えたあの女に」
「勇作さんもご覧になりましたでしょう?彼女はもう人では無いそうです。“鬼”だと、あの方は言っていました」
ダンッ!と廊下の壁が叩かれた。
その音に驚いてビクッと体を揺らす。
「誰だか知らないが、そいつは男だろう?君は僕より、一度会ったきりの男の言葉を鵜呑みにするのか!」
「い、いえ!ですが用心するに越したことはないと…」
「鬼なんてそんな非現実的なもの、居るわけがないだろう!馬鹿馬鹿しい。もうその話しもするな。君は結婚の事だけ考えていればいい!!」
そう言うと私を振り返ることなく、勇作さんは去っていった。
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月見(プロフ) - はぁぶ。@3ちゃいさん» コメントありがとうございます!1日1話ゆっくりですが更新していきますので、完結までよろしくお願いします!! (2020年10月26日 6時) (レス) id: 9eeadbb9f3 (このIDを非表示/違反報告)
はぁぶ。@3ちゃい - 普通に続きが気になる…作者さんのペースで更新頑張ってください!応援してます! (2020年10月25日 22時) (レス) id: 4dd2fcae8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2020年9月24日 19時