勇を持つ二人 ページ45
「義勇さんは本当にお優しいですね。勇作さんと違って………同じ“勇”の字を名前に持っているのに、不思議です」
勇作さんは一度決めたことは恐れずに挑む精神力がある人。
一方の義勇さんは、己の危険も省みず鬼に立ち向かっていく強い人。
こんなにも違う。
勇作さんと義勇さんは全くの他人なのだから、比べるのはおかしいけれど。
私の婚約者が義勇さんだったら…
と、ありもしないことばかり考えてしまう。
「俺は大した人間ではない」
目を伏せて遠くを眺めるような義勇さん。
彼が何を思ってそう言うのかは分からない。
「それでも、私にはそう見えます」
伝えた後で「あ…」と慌てて付け足す。
「これはここだけのお話しですからね?」
勇作さんと違ってだなんて、婚約者の悪口にも取れる。
また争いの火種になりかねない。
「こうして会っていること自体、A殿にとっては秘密にすべきことなのだろう?」
言われてみればそうだ。
義勇さんに関わること全て、私の周りに知られてしまうと良くない。
「え、えぇ」
「ならば問題ない」
穏やかな表情の義勇さんに他言するつもりはないのだと分かってほっとする。
「…だが安心した」
「え?」
見れば義勇さんもどこか安心したように穏やかな表情をしていた。
「返事が途絶えたから嫌われたのだと…」
一瞬何のことを指しているのか分からなかった。
けれど、文の返事を送らなかった話だと分かって慌てる。
「あ、いえ!決してそんなつもりでは…!ただ、何と書いてお送りするか考えているうちに悩んでしまって。それで…」
「悩む?何か返答に困る内容でも?」
「そう言う訳では…」
単純に何を書いてもどこか気恥ずかしくて、しっくり来なかっただけだ。
本人を目の前にしてそこまで説明しないと駄目だろうか。
考えただけで頬が熱くなっていく。
尚も首を傾げて私の返事を待つ義勇さん。
「もうっ、何でもいいじゃありませんか。この話はお仕舞いです」
「良くない」
恥ずかしさから無理やり丸め込もうとすると、きっぱりと言いきられた。
「何かあったのではと」
「心配してくださっていたんですか?」
「………気になっただけだ」
「それを心配と言うのではありませんか?」
気が付いていないのか、気になっただけと言い張る義勇さんに何だか暖かい気持ちで心が満たされた。
返答に困っているのか複雑そうな表情の彼に笑みが溢れる。
「ふふふっ。ご心配をおかけ致しました」
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月見(プロフ) - はぁぶ。@3ちゃいさん» コメントありがとうございます!1日1話ゆっくりですが更新していきますので、完結までよろしくお願いします!! (2020年10月26日 6時) (レス) id: 9eeadbb9f3 (このIDを非表示/違反報告)
はぁぶ。@3ちゃい - 普通に続きが気になる…作者さんのペースで更新頑張ってください!応援してます! (2020年10月25日 22時) (レス) id: 4dd2fcae8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2020年9月24日 19時