複雑 ページ33
「私が誰と生涯を共にするかは、例え私にお慕いしている方がいたとしても私の意思では決められませんから。それは私にとっても答えのない疑問なんです」
自分でそう言っておきながら、心が抉られるような気分だった。
私は父の決めた相手と一緒になる。
昔からそう思ってきた。
だから結婚することが幸せなのか、結婚するから幸せになれるのか分からない。
とは言え、恋愛をしてこなかった私にはお慕いしているような人はいないし、それがどのようなものかも分からないのだけれど。
「複雑なのだな」
「え？」
ぽつりと呟かれた言葉に義勇さんの方を向けば、彼もこちらを向いていて目が合う。
「A殿たちの関係は」
「…えぇ」
言われて納得する。
親友と婚約者と私。
私たち三人を結びつける関係はかなり捻れてしまった。
「私は正直、雪乃が勇作さんと結ばれてくれていたら…と今でも思うんです。一緒にいる二人はとても幸せそうでしたから」
「そうか」
「まさか、義勇さんにこの話しをする日が来るなんて、あの時は思いもしませんでした」
話の流れとは言え、身の上話をすることになるとは思ってなくて。
恥ずかしくなったのか顔が熱い。
それでも義勇さんに初めて会った日を思い出すとなんだか可笑しくて。
ふふふっと笑って隣の義勇さんを見た。
「…？」
彼が眉をしかめて私を見ている。
「初めてお会いした日、義勇さん聞いてきたでしょう？雪乃が私たちに恨みを抱えているように見えたから、何があったかって」
「……あぁ」
思い出したように声をあげる義勇さん。
「これがあの時の答えです」
考えてみると私と義勇さんの関係は複雑な事情の中で生まれた、信じられない出来事によるものだ。
雪乃が鬼になってしまったことはとても辛い。
けれど、それがなければ彼とは会うことすらなかったのかも知れないと思うと、それはそれで胸が痛んだ。
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月見(プロフ) - はぁぶ。＠３ちゃいさん» コメントありがとうございます！１日１話ゆっくりですが更新していきますので、完結までよろしくお願いします！！ (2020年10月26日 6時) (
レス) id: 9eeadbb9f3 (このIDを非表示/違反報告)
はぁぶ。＠３ちゃい - 普通に続きが気になる…作者さんのペースで更新頑張ってください！応援してます！ (2020年10月25日 22時) (レス) id: 4dd2fcae8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月見 | 作成日時：2020年9月24日 19時
