8ー5…とうそう ページ43
採血セットを持って診察室に戻る途中、何やら騒がしい声が聞こえた。
急いで戻ると、診察室から出ようとドアの取っ手を持つ光とそれを後ろから一生懸命引っ張る大ちゃんがいた。
慌てて採血セットを机に置き、駆け寄って大ちゃんと一緒に光を引っ張る。
「光、どうした？まだだよ」
「やだ！もう帰る！」
俺ら2人で引っ張っても、取っ手にしがみついて動かない光。
「ごめん、採血のこと言ったら帰るって聞かなくて…」
申し訳なさそうに言う大ちゃん。
「いいよ。大丈夫、どの道こうなってただろうし。とりあえず今は先にドアから離そう」
「うん…わかった」
どうしても離れないから一度光から手を離すことに。で、診察室を出たところで捕まえる。
「大ちゃんも離して？」
「え？…あ、うん」
一瞬迷ったような顔をしたけど、作戦が分かったのか頷いてくれた。
大ちゃんが手を離した途端、勢いよくドアを開けて、走って出ていった光。
その後を走って追いかける。
本当は、光がドアから手を離してすぐに捕まえるはずだったんだけど、振りきられてしまった。まさかの作戦失敗。
この病院にあまり詳しくない光は、出口とは反対方向に走っていく。
徐々に距離をつめ、もう少しという所で、光が曲がり角から出てきた人とぶつかって転んだ。
「光！」
大ちゃんと声がハモったけど、今は気にしている場合じゃない。呆然としている光を抱き起こす｡
「あの…ごめんなさい」
光に呼びかけていると、上から声が聞こえてきた。
どこか聞き覚えのある声だと思いながら顔を上げると、よく見知った顔で。
「おぉ、圭人じゃん」
俺の顔を見て驚いた顔をした圭人。
「知り合い？」
大ちゃんが俺と圭人を交互に見て言う。
「そうそう。今俺の科で研修医やってるんだよ。確か大ちゃんと同い年」
軽く大ちゃんと圭人を交互に紹介した。
「そうだ。圭人私服ってことは今帰りだよな？手伝ってくれない？」
「運ぶのですか？もちろんいいですよ」
今の状況から見たらそう思うよな。
大ちゃんに光を任せて、少し離れた所で圭人にさっきまでのことや病院が苦手なことを小声で説明した。
「ちょっと大変だけど、手伝ってくれる？」
「大丈夫です！お手伝いしますよ」
よかった。事情を理解してくれて助かる。
お礼を言って二人もとへ戻ると、座ったまま大ちゃんに抱きついている光。
「光、疲れたね。ちょっとベッドで休もっか」
怯えないように優しく言って、診察室へ戻った｡
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TT(プロフ) - ♪尾曲がりニャンコ♪さん» ご意見ありがとうございます。応援、励みになります♪ (2017年3月4日 10時) (
レス) id: a5409a49a2 (このIDを非表示/違反報告)
♪尾曲がりニャンコ♪(プロフ) - 作者さんが分かりやすく書いてくれてるので、今のままで大丈夫だと思います！更新ファイトです！ (2017年3月3日 11時) (レス) id: 79d67a7ed9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：TT | 作成日時：2017年2月25日 0時
