【遊戯王VRAINS】空白アルビレオ【藤木遊作】

非日常の中の平穏 ページ6

街頭が照らす街中で草薙とAは店仕舞いの為の片付けを済ませ、キッチンカーへと足を向ける。今日の売上も上々。

｢Aiちゃんさぁ、暇じゃない？｣

『俺もちょ〜暇ぁ〜。けど、遊作が邪魔するとぶん殴るみたいな雰囲気出しててさ〜』

｢Aiちゃんが殴られても私は痛くないから別にいいよ。暇だしお喋りしよ｣

『無情！！』

｢うるさいぞ二人共。邪魔するなら二人同時にここから追い出す｣

騒ぐ二人に、Aiは問答無断でミュートにされた。少しかわいそうに思いながらもAは椅子の背もたれに寄りかかる。

Aiも出会った当初は、厳つい刺青を入れていたAに軽くビビっていたが、今ではそれなりに慣れてしまったのもあり、平気で軽口を叩けるようになった。生徒会長面のAには慣れないみたいだが、それは遊作も同じだ。

｢今日、遊作ん家泊まっていい？｣

｢好きにしろ｣

｢前の服まだ置いてる？捨ててないよね？｣

｢嫌という程溜まってる。早く持って帰ってくれ｣

｢え〜…めんどくさい…。というか、遊作の家なんて週に8回くらいの割合で泊まってるからいいじゃん…｣

Aが彼に話しかけると、遊作は先程の会話を聞いていたのか、思ったよりも返事をしてくれる。Aは、作業が忙しいなら少しは手伝おうと考えていたが、どうやら大丈夫な様。彼女が遊作の家に高頻度で泊まる事は日常と化していて、遊作もそれを不思議には感じていない。ほとんど半同棲の中で、唯一、二人の微妙な関係性に疑問を持っているのは草薙くらいだった。

｢お前らって仲良いよなぁ｣

草薙の言葉に遊作とAは同時に顔を見合わせる。その行動を不思議に思った草薙が首を傾げると同時に、Aが立ち上がり、遊作がほんの数センチ草薙の方へと席を寄せる。それに合わせたようにAが勢いよく草薙の後ろから飛びつくように抱きついた。

｢わっ！｣

｢ふふ、翔一さんも含めて！私たち三人は仲いいんだから忘れないでね｣

｢そうだ。Aと二人だと何もかも成り立たない。それに、俺達は草薙さんを信用している｣

｢……ははっ、ありがとな。俺も二人と居られて嬉しいぞ｣


二人は草薙が仲間はずれにされていることを拗ねているのだと勘違いしたらしい。本当の事を言えそうにない雰囲気に草薙は戸惑うも、自分の心が温まったことを感じて笑みを零し、これ以上考えるのをやめた。

だけど、結婚する時くらいは俺にちゃんと言ってくれよ…？

当分先の話を見つめ、草薙は苦笑いした。

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