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夕方を過ぎて、遊作がキッチンカー前の看板をcloseに変えると、先に中で腰掛けていたAと草薙が彼を出向かえた。
Aが倒れたあの後、リボルバーとの対決はデータストームの中でマスターデュエルに移り変わったらしい。彼はスピードデュエル中には姿を見せなかったAをそこで抱えていて、遊作がそれを助けた事を草薙が説明しながら、まるで王子と姫だなと茶化した。それを眉間にシワを寄せて聞いていた遊作が何かを言いたそうにしていたが声にする事はなかった。
「少し考えたいことがある」
「それって…」
「リボルバーの言ってた、意思を持つAIのことか」
三人が椅子に腰掛けながら作業を始める。リボルバーが言っていたことをAは直接聞いてはいないが、二人の話から耳に入れた。考えすぎだ、と茶化す草薙にAと遊作はそれを簡単に流していいことだとは思わなかった。だけど、それを説明する言葉もない。黙ったままの二人に草薙は話を続ける。
「もしAiに意思があったら、今頃一人お留守番で寂しがってるだろうな」
「それはないね」
「あぁ。無いだろうな」
真顔できっぱり切り捨てるAと遊作に草薙が苦笑いを溢した。
今頃、遊作の家で掃除ロボットと何か企み、戯れているAiのことを三人は知る由もない。
作業始めて数時間。三人は黙々とそれを進める。心地の良い室内と静けさに連日の寝不足から寝てしまった草薙を尻目に、二人はそろそろお暇するか悩んでいた。
「おっと、こんなとこにも。これも消さないとな」
Aが取り出したブランケットを草薙に掛けながら見つけたデータを見て、ギョッと顔を驚かせた。
「これ、私の姿映ってるじゃん!」
「ゴーストガールの仕業だろ。これを撮れる人間は数少ない。Aのアカウントも容易く使うのは憚られるようになったな」
「身バレ防止重視のアカウントが身バレに繋がる……!A先生の次回作にご期待ください!!」
「早く手を進めろ」
遊作がいつもの顰め面で手を動かし、Aはむすっと頬をふくらませて席に戻る。それを遊作がつつけば、構ってもらったことが嬉しかったのか少しだけ頬を緩めた。
「ふへ…」
「……。」
遊作の肩に寄りかかるAに彼は何も言わない。逆にそれを心地良さそうに少しだけ口角を上げ、手を動かす。
甘ったるい雰囲気の中、密かに起きてしまった草薙が、起きるタイミングを逃したと眉をひそめた。
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*鏡花*(プロフ) - とっても面白いです!更新頑張ってください!楽しみにしてマース((o(。>ω<。)o)) (2018年1月27日 6時) (レス) id: 9c1718446a (このIDを非表示/違反報告)
しゅりんぷ(プロフ) - ヨシュアさん» 再度コメントありがとうございます。実はリアルファイト、VRAINSでもやってほしい!という私自身の希望でして…。夢主は決闘で決着!という決闘者観念より、助ける為の手段は問わない!を選択する子だろうなっていう小ネタでした!にやっとして頂けたなら嬉しいです! (2017年9月27日 23時) (レス) id: 2c7774ba2e (このIDを非表示/違反報告)
ヨシュア(プロフ) - 遊戯王恒例(?)のリアルファイト…!VRAINSではまだありませんが、デュエル(物理)に思わずにやっとしました(笑) (2017年9月27日 21時) (レス) id: 79e3295e29 (このIDを非表示/違反報告)
しゅりんぷ(プロフ) - 衣深汰さん» わ〜!コメントありがとうございます。遊作くんと夢主ちゃんの関係は互いの心の拠り所であればいいなぁ…という思いで書かせて頂いてます。夢主ちゃんとみんなの絡みが癒しになっていれば幸いです!!これからも小説共々よろしくお願いします。 (2017年9月24日 18時) (レス) id: 012664095e (このIDを非表示/違反報告)
衣深汰(プロフ) - コメント失礼します!遊作くんと夢主ちゃんの関係がとても良いです…!そこに草薙さんとイグニスも入って癒しが…!言葉が足らなずすみません…!更新頑張ってください! (2017年9月24日 2時) (レス) id: 51088f03f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゅりんぷ | 作成日時:2017年9月17日 16時