夕暮れのガールミーツガール ページ14
｢葵ちゃん、良ければ帰り一緒でもいいかな？｣
｢草薙先輩…。勿論構いませんよ｣
｢あ。あのさ、草薙先輩って硬っ苦しいし名前で呼んでほしいな｣
｢……じゃあ、A先輩｣
｢うん、葵ちゃん｣
Aがにっこり微笑むと、葵が嬉しそうに頬を染める。彼女の友人の有無は分からないが、あまり気の許せる友人はいないのだろう、下心がないと思い込んでいるAからの言葉に葵は心を綻ばせた。
Den Cityの夕暮れの町並みを二人で歩く。葵との話は尽きず、デュエルの話から学校内の話。話題がわんさか出てきた。
｢そういや、葵ちゃんは義兄さんがソルテクノロジーなんだよね？凄いなあ｣
その言葉に、葵が固まり足を止める。そんな彼女にAは、やっと真相に辿り着けたと非道なことを考えていた。勿論、その話が彼女の地雷であることを先程の雰囲気から把握していた。それでもこの話を持ち掛けたのは、自分達の目的の為だ。彼女には申し訳ないが、少し話を踏み込ませてもらう。
｢……A先輩はデュエル初心者って言ってましたよね？｣
｢……うん？｣
｢私の周り、多いんです。兄さんを目当てに近づいてくる人。私に頼んだって兄さんの会社のコネは貰えないのに…、私に近づく人はそんな人ばかり……｣
｢葵ちゃん…｣
｢先輩は違うってわかってます。分かってるつもり、です。でも…もし。…もし私の思い違いで…。いや、そうなら。諦めてください。私、兄さんにそんなに信用されてないんです｣
葵が顔を伏せると、Aは彼女の言葉に目を丸くした。そうか、彼女は何も知らないんだ。そう悟ったAが少しだけ唇を噛む。何も知らないのに、何かに巻き込まれた可哀想な子。同情が心の中に湧き上がり、それと同時に自分はこんなに情に厚い人間だったかと心の中で自嘲する。そして彼女の両手を自分の手で包み、抱きしめた。
｢…葵ちゃん、大丈夫だよ｣
きっとこの子は私に怯えてるわけじゃない。この子にはせめて明るい道を歩いてほしい、Aはまるで復讐心を抱く前の。闇の中で怯えて泣いているだけだった自分と重ね、頭を撫でる。
その後、彼女の腕を引いてマンションまで送り届ければ、またねと微笑んだ。葵は、自室へと向かう途中に彼女の暖かさを思い出す。
「…A先輩」
エレベーターの中で小さく呟くと同時に自室の階へと導かれたベルが鳴った。
弱い私を許してほしい、それは幼きAの声か。それとも葵の心の声か。誰にも届くことなく沈む。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
＊鏡花＊(プロフ) - とっても面白いです！更新頑張ってください！楽しみにしてマース((o(｡>ω<｡)o)) (2018年1月27日 6時) (
レス) id: 9c1718446a (このIDを非表示/違反報告)
しゅりんぷ(プロフ) - ヨシュアさん» 再度コメントありがとうございます。実はリアルファイト、VRAINSでもやってほしい！という私自身の希望でして…。夢主は決闘で決着！という決闘者観念より、助ける為の手段は問わない！を選択する子だろうなっていう小ネタでした！にやっとして頂けたなら嬉しいです！ (2017年9月27日 23時) (レス) id: 2c7774ba2e (このIDを非表示/違反報告)
ヨシュア(プロフ) - 遊戯王恒例（？）のリアルファイト…！VRAINSではまだありませんが、デュエル（物理）に思わずにやっとしました(笑) (2017年9月27日 21時) (レス) id: 79e3295e29 (このIDを非表示/違反報告)
しゅりんぷ(プロフ) - 衣深汰さん» わ〜！コメントありがとうございます。遊作くんと夢主ちゃんの関係は互いの心の拠り所であればいいなぁ…という思いで書かせて頂いてます。夢主ちゃんとみんなの絡みが癒しになっていれば幸いです！！これからも小説共々よろしくお願いします。 (2017年9月24日 18時) (レス) id: 012664095e (このIDを非表示/違反報告)
衣深汰(プロフ) - コメント失礼します！遊作くんと夢主ちゃんの関係がとても良いです…！そこに草薙さんとイグニスも入って癒しが…！言葉が足らなずすみません…！更新頑張ってください！ (2017年9月24日 2時) (レス) id: 51088f03f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しゅりんぷ | 作成日時：2017年9月17日 16時
