君は小悪魔 ページ36
「いつもありがとうね。またよろしく」
「来るのはこれで最後です」
いつもの移動販売。スターダストロード前の広場で店を出している草薙とバイトのAはえっ!と声を上げると目の前にいた白髪の青年を見た。草薙は引越し?と目の前にいる彼に問いかけていたが、客席に居座っていた遊作はほんの一瞬だけ彼の姿を確認するとまた興味のなさそうに自分のPCを見つめる。ホットドッグを買って、去っていく後ろ姿にAは先日スターダストロードであったことを脳に浮かべた。あの時、慰めてくれたのは確かに彼だった。そんな彼とはもう会えない。少し寂しいような悲しいような気持ちにAは決心付けて、エプロンを脱いだ。
「あ、おいA!」
「5分休憩貰うね!」
キッチンカーから出て、その背を追って走り出したAに草薙は勿論興味なさげにしていた遊作も再び顔を上げてAの背を凝視する。どうせ最初で最後なんだから、挨拶くらいさせて欲しい。Aは彼の名前を呼び、その姿を引き止める。自分より背の高い彼が振り付き、そのコローグレイの瞳がAの瞳を見つめる。そしてああ、と微笑んだ。相変わらずのイケメンっぷりだ。
「今日が最後だって聞いて、つい。あの先日はありがとうございました」
「いや、こちらこそ。君の気が晴れたならよかった」
「えへ…、了見さんがもう来ないんだって思うとなんだかちょっと寂しいですね」
「私も寂しい。でもAさん、貴方とは何れまた会える気がしてるので」
「あはは、もうまたお口が上手ですね!」
「はは、今度会えたその時は貴方に……」
ざざっ、大きな潮風が吹いて二人の間を駆け抜ける。海が大きくなって、彼が口を閉じた頃、カモメが鳴いた。彼の声は自然の声にかき消され、Aが何て言って…?と唇を動かせば彼の手が彼女の髪に触れた。
「潮風で乱れてしまったな」
「あ、すみません…ありがとうございます…」
「いや、では私はこれで」
「あ…了見さん!パブリックビューイングの広場でもお店!やってるので!いつでも来てくださいね!」
今度こそ、彼は振り向かなかった。崖上にある家へと向かう彼を見つめ、キッチンカーへと戻れば草薙と遊作の視線が痛くて、Aはこれからする言い訳を脳で必死に考えた。
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遊真 - これから主人公がどうなっていくのかが凄く気になります!これからも頑張ってください! (2019年8月14日 16時) (レス) id: 70b9e10207 (このIDを非表示/違反報告)
リナ - しゅりんぷさんの作品、早く読みたいです! (2019年8月6日 23時) (レス) id: cfdd277789 (このIDを非表示/違反報告)
篝月(プロフ) - 初めから読んだので、続きが凄く気になります! (2019年5月24日 23時) (レス) id: 7982b0814b (このIDを非表示/違反報告)
しゅりんぷ(プロフ) - 白哉さん» コメントありがとうございます。ソウルバーナーいいですよね。いつか二人も出せるようにしたいなとは思っております。それまでどうかこの小説とお付き合い願えたら嬉しいです。 (2019年4月1日 1時) (レス) id: a80e55b6ef (このIDを非表示/違反報告)
白哉 - できたら穂村尊とフレイム(ソウルバーナー)を出してほしいです。 (2019年1月20日 17時) (レス) id: 8418d83dca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゅりんぷ | 作成日時:2017年12月13日 0時