ご機嫌なバディ ページ15
その日、キッチンカーにAと遊作が手を繋いで帰ってきたのを見て、草薙はほっと息をついた。Aは気まずそうな顔でごめんなさい、と草薙に告げると彼もまた、気にしていないと彼女の頭を撫でた。困ったように笑うA。結局あの写真のことは遊作には話していない。今、確信のない証拠と理論をぶちまけて、混乱を呼ぶのは避けたかった。それに、遊作もその事についてあまり気にしていなかったからだ。Aは久々の定位置へと腰掛ける。例え、過去のAに何があろうとも、今は自分のもの。誰にも渡さない。遊作もまた、その隣に腰を下ろした。
「あの日以来、財前葵とは会ったのか?」
「うん、すっきりした顔してたよ」
まるで全部吹っ切れたみたいに。
Aは笑って答える。様子を見るに、ブルーエンジェルとしての自分をしっかり見つけたようだった。自分の在り方、それを見つけるのは難題だとAは思う。自分という存在、それって何なんだろうか。何となく、そんな考えを頭の中で巡らせる。私を私と確定する何か、それって何を根拠に見つけるのだろう。
「……自身の在り方って、何なんだろうね」
「難しい質問だなA。それはブルーエンジェルが自分を見つけたからか?」
「八割そんなとこ。翔一さんは、自分が草薙翔一であることの証明、って出来る?」
「Aの言っていることは戸籍とか、そういうんじゃないんだろ?そうだなぁ…自分の証明かぁ……」
Aiが、そういう質問ならAIは楽だな。と答える。だって、AIは製作者がいる。つまり、彼を彼だと証明し、位置付けられる人間がいるのだから。Aiが珍しく余裕そうに答える。そういう理論なら、草薙も親や兄弟がいる。彼たちが彼であることを証明してくれることになる。なら、周りには誰もいない私は、どう見つければいいのだろうか。Aがほんの少しだけ、悲しそうに斜めを向いた。
「……俺が、証明する」
「遊作…?」
「Aが迷った時、俺があんたをAだと教えてやる。」
Aが何者だろうと、俺たちと行動を共にして、俺の隣にいたのはあんただと。
息が止まりそうな程、熱烈な言葉だった。Aは彼の言葉に微笑んで頷いた。
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遊真 - これから主人公がどうなっていくのかが凄く気になります!これからも頑張ってください! (2019年8月14日 16時) (レス) id: 70b9e10207 (このIDを非表示/違反報告)
リナ - しゅりんぷさんの作品、早く読みたいです! (2019年8月6日 23時) (レス) id: cfdd277789 (このIDを非表示/違反報告)
篝月(プロフ) - 初めから読んだので、続きが凄く気になります! (2019年5月24日 23時) (レス) id: 7982b0814b (このIDを非表示/違反報告)
しゅりんぷ(プロフ) - 白哉さん» コメントありがとうございます。ソウルバーナーいいですよね。いつか二人も出せるようにしたいなとは思っております。それまでどうかこの小説とお付き合い願えたら嬉しいです。 (2019年4月1日 1時) (レス) id: a80e55b6ef (このIDを非表示/違反報告)
白哉 - できたら穂村尊とフレイム(ソウルバーナー)を出してほしいです。 (2019年1月20日 17時) (レス) id: 8418d83dca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゅりんぷ | 作成日時:2017年12月13日 0時