【遊戯王VRAINS】空白アルビレオ２【藤木遊作】

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キッチンカー内では既に作業に取り掛かる草薙が、帰ってきたAの椅子を引き、おかえりと微笑む。それをAもただいま、と席に座った。草薙が淡々と作業を進める横、Aは自分だけが眠る気分にもなれず、もう一度作業に取り掛かろうとキーボードに手を伸ばす。だがそれは叶わず、隣の草薙がやんわりとAの手を阻止し、こちらを見ずに呟いた。

｢流石にこれ以上Aにやらせる訳にはいかないな。大人しく寝てくれ｣

｢眠たくないし大丈夫だよ、手伝う｣

｢感覚が麻痺してるな。A、ここからは俺の仕事だ。これ持って、目つぶって三十秒数えろ｣

｢……わかった｣

渡されたヴェルズ・マンドラゴのぬいぐるみを抱きしめ目を瞑る。というか、このぬいぐるみ、草薙さんどこで手に入れたんだ…。買ったのか、二十うん歳の大人が買ったのだろうか…。やばい、草薙さんがおもちゃ屋でぬいぐるみ買う姿、見てみたい。口には出さずに目を瞑り、数を数えながら考える。いち、に、さん、とゆっくり数字を頭に思い浮かべるうちに意識が朦朧となっていく。ふわふわ、ゆるゆると頭に靄がかかり、瞼が鉛のように重く、開かない。あぁ、だめ。もう数も数えられそうにない、ふわふわと溶けていく意識の中、優しく低い声が脳の奥で聞こえる。

｢おやすみA｣



おやすみ翔一さん。それは声にはならず、微睡みの中で消えた。


そんなAが寝息を立て始めた頃。草薙はほっと息をついて、身近にある毛布を彼女にかける。予め積んである備品の一つで、それはAが今抱いているぬいぐるみも同じ。営業先の遊園地で何故かお礼に貰ったヴェルズ・マンドラゴのぬいぐるみ。捨てるのも億劫で、何となく積んだまま忘れていたがまさかこんな所で役に立つとは。草薙はそれを抱えて眠るAの姿を見つめて笑みをこぼす。これからはA専用のぬいぐるみだな。そんな愛らしい姿に草薙も少し手を止め、彼女の目にかかる前髪を取り払った。

｢お前も俺から見たら充分子供だよ｣


だから偶には抱えすぎずに甘えるべきだし、変なところで意地を張るのもやめた方がいい。頼ることを忘れないでほしい。

これはAのわがままではなく、俺のわがままだ。妹のように危なかしいAの、あどけない寝顔に草薙は安堵を浮かべた。

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