【遊戯王VRAINS】空白アルビレオ２【藤木遊作】

眠らない朝に ページ45

｢起きろ遊作、学校に遅れるぞ｣

｢遊作く〜んおっきしましょ〜ね〜｣

｢ん……｣

『Aちゃん朝からテンション高くない？』

｢徹夜明けはね、人間こうなるんだわ｣


あれからAは徹夜で作業。草薙には遊作と同じように軽く仮眠をとってもらい、迎えた朝。Aの方はとっくに学校に休む連絡を入れ、遊作を起こす。遊作は軽く目を擦り、まだ眠たそうにしているが生憎八時を回ったこの時間。そろそろ起きて学校に向かわないと遅刻してしまう。遊作の目覚めは悪くない、視界に映るAと草薙の姿を捉えるとすんなり目を開け、体を起こした。

｢あとは俺がやっとく。学校が終わったらバトンタッチだ｣

｢Aは……｣

｢夜は私が作業したので、翔一さんにバトンタッチ。私はこれから寝るよ｣

｢……そうか｣

行ってきます、身支度を済ませた遊作がキッチンカーの外へと出る。行ってらっしゃい、草薙は軽く手を振り後ろ姿を見送ると再び席に戻った。ゆっくりとドアが閉まる……その前に、Aはキッチンカー内から飛び出す。遊作、彼の名前を呼び、さほど遠くない後ろ姿が振り向いた。

｢……遊作、｣

｢？ A…っ！？｣

駆け足で彼に近寄り、振り向いた彼の唇に、少し背伸びをして自分の唇を押し付ける。驚いた様子の遊作が目を見開き、真っ赤になったAの顔を見つめた。周りには勿論、誰もいない。二人だけの世界で先に言葉をこぼしたのはAの方だった。

｢…行ってらっしゃいのキス、みたいな｣

慣れないことはする物じゃないなぁ、頬を染めて照れ笑うA。そんな彼女の姿に遊作は胸がきゅぅっと締め付けられたような感覚に陥った。

｢……そういうことをされると、行きたくなくなる｣

｢こらこら｣

Aの肩に、正面から頭を預ける遊作の髪を撫でる。離れたくないのはお互い様。

気をつけて行ってらっしゃい、なんてまるで新婚みたいだ。背を見送ったAがよし！とその場で気合を入れた。

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