【遊戯王VRAINS】空白アルビレオ２【藤木遊作】

進む道を選ぶグレーテル ページ40

財前と別れてすぐ、Aはいつものキッチンカーに足を踏み入れる。そこでは相も変わらず草薙が迎え入れてくれた。

｢おかえりA、遊作なら既にLINK VRAINSだ。追いかけるか？｣

｢勿論。だけど、その前に。

……葵ちゃんと、喋ったよ｣

それを聞いた草薙は顔色も変えずにどうだった？とAの方をちらりと見て尋ねる。それにAも制服の上着を脱ぎ、コートを椅子に掛けながら答える。きっと遊作はブルーエンジェルがLINK VRAINSに来ようが来まいが関係ないのだろう。それは自分も同じだけど、彼女が来てくれなくて寂しい、という感情はまた別。それこそアナザー事件の痛みを知っているブルーエンジェルに協力してもらいたいものだが。

｢迷ってたよ、すごく｣

｢財前晃と和解した今、財前葵にとってブルーエンジェルは必要ないからな…｣

｢でも…私は葵ちゃん、来ると思うよ。LINK VRAINSに｣

何故？と微笑みながら聞く草薙に何となく、と答えたAは笑って彼に背を向ける。彼女は来る、きっと。どんな理由であろうと財前葵、ブルーエンジェルはみんなが思っているほど弱い人ではない。それこそ、控えめな位置で大人しくしているような少女を演じているが、心の中には決闘者らしい、決闘に情熱を注ぐ、獣という名の魂を飼っている。例え、財前晃が止めても彼女は迷った末にこっちに来るだろう。全部女の勘だけど。

ドアを潜って目をつぶった先、いつものようにLINK VRAINSへと潜れば、そこは燕青の世界だった。ディスクに表示されるLINK VRAINSの座標がPlay makarの位置を記し、そこを辿る。デュエルを一つ済ませ終えたのか、1箇所で立ち止まるPlay makarとその隣。GO鬼塚の名前。燕青は急いでその場所へと足を進め、ビルとビルの屋上を次々と飛び越える。最短距離で向かった先、二人が話し込む姿に燕青はビルの屋上から飛び降りて二人の前へと降り立った。

｢お疲れ様二人とも。既にハノイを倒したあとかな？｣

｢あぁ、燕青は今来たのか｣

｢うん。僕も今から手当り次第ハノイを片付けるよ｣

大きく開いた服の袖を捲り、ガッツポーズをとった燕青。三人はそれから少し会話をすると、また分かれ、ハノイの散策に戻る。燕青も本格的にこのLINK VRAINSに関わった今、既に何かが大きく揺らいでいることを、まだ誰も知らない。

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