【遊戯王VRAINS】空白アルビレオ２【藤木遊作】

誰かの為の犠牲 ページ29

あの後、Aが持ってきていた端末で救急に連絡し、無事に君島まことが運ばれたのを影で見届けた。そして二人はその足で、運ばれた病院に赴く。緊急治療室前、鬼塚とそのマネージャーの話し声が聞こえ、Aは制服で来ちゃったの失敗したなぁ、と髪を人差し指で遊んでいる。その隣、遊作は壁に体を預けて話に耳を立てた。どうやら、鬼塚と君島まことという少年は同じ施設の友達らしい。デュエルを進めた自分を悔やむ鬼塚に優しい声をかけるマネージャーの声がふたりの耳に届いた。

｢どのような処置を行っても意識が戻りません。これまでに確認されているアナザーと同じ症状です…｣

治療室から出てくる君島まことを一瞥し、ドクターと鬼塚の話に耳を傾ける。やはり彼も他の患者と一緒で、ウイルス除去プログラムを酷使するしか方法はない様。結局、ブルーエンジェルと同じことになってしまった。Aが一番恐れていたこと、それはハノイが自分達の持っている力を振り翳すことだ。データストームを起こす力、電脳ウイルス。他にもハノイは力を持っているのだろう。ハノイがそれを振りかざせば、LINK VRAINSでパンデミックが起きる事は目に見えていた。もう起こってしまっているから、ごちゃごちゃ言っても仕方ないのだが。

一通りの話を聞き終えると二人は壁から体を離し、明日草薙さんに報告だな、と廊下を歩き始める。

｢待て、ここで何をしている？｣

後ろから聞こえた声に遊作は体を止め、Aは驚きで肩がはねた。振り返ると、先程ドクターと喋っていたはずの鬼塚豪が立っていてAはやっちゃった、と一瞬顔を顰めた。

｢まことと同じ制服？心配して来てくれたのか？｣

｢えぇ。まぁ、そんなところです｣

珍しい敬語姿の遊作がポーカーフェイスで話を合わせる。こんな時間に、同じ学校の生徒が心配してっておかしく思われないかな…、でも誤魔化されてくれそう？Aが心配そうに遊作を一瞥する。鬼塚はAの方に顔を向けると、Aも急いで笑みを取り繕った。

｢お前達、名前は？｣

｢藤木…、藤木遊作｣

｢そっちの嬢ちゃんは｣

｢えっ、と…草薙。草薙Aです｣

変に緊迫した病院の廊下。ぎゅっと握りしめた制服の裾がいびつに歪んだ。

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