【遊戯王VRAINS】空白アルビレオ２【藤木遊作】

カーテンコールはまだ、 ページ20

あの後、やはり列記とした収穫はなく。遊作の自宅前。Aと遊作は目の前の暗闇で小さくなっていくキッチンカーを見送った。

今日も彼の家で泊まり。Aは遊作の家のシャワーを借り、濡れた髪を拭う。彼はAの出た後に入れ替わりでシャワーを浴びに脱衣所へと向かっていった。

Aはベッドの上でぼんやりと思考を巡らせる。

結局、手がかりは何一つ掴めなかった。彼女は自分のデッキに手を滑らせ、ベッド付近に置く。このカードたちの意味、自分の存在。何一つ分からず終い。SOLのマザーバンクの中に自分たちを導く情報はなかった。ようやく掴めたと思った鴻上博士という首謀者は既に死んでいて、その事件に関わっていたソルテクノロジー社の社員達の足取りも結局は掴めず。

静まり返った部屋にぼふっとベッドに音を立ててAは体を沈ませる。

｢髪、濡れたままだろ｣

｢あれ、もうあがったの…｣

｢女じゃないからそこまで時間はかからない｣

ベッドに沈む彼女の顔をのぞき込む遊作。彼もシャワーを浴び終えたらしく、髪が濡れていた。Aは前にいる彼の首に手を回し抱きしめる。

｢遊作、あのさ…｣

｢ん？｣

｢復讐…やめないよね？｣

不安そうなAの顔に遊作が息を呑む。ありえない、そんなことは無いと分かっている。だけど、鴻上博士は死んでいた。もう彼の復讐は終わったのかもしれない。そんな気がしてしまったのだ。Aは彼から目をそらし、首に回していた手を解く。

｢…Aはやめたいのか？｣

悲しそうな遊作のその声に再び目を合わせ、彼女は大きく首を振った。声と同様、その顔も悲し気でAはぼそりと彼の名前を呼んだ。彼は解かれたAの手を取り自分の方へと持っていく。どうしてそんなに悲しそう顔するの、それじゃまるであの時みたいで…。

｢やめたい、とかじゃない。私は遊作が決めたこと全てについてくつもりだよ｣

｢…そうか｣

｢私はね…、遊作が幸せなら幸せなの｣


だから、遊作がやり遂げたいなら私もそう。

彼の目を見つめ、掴まれていた手をすり抜け彼の頬を撫でる。遊作のエメラルド色の瞳が揺らぎ、彼女の名前を一つ。

髪から滴る雫はまるで涙のようだ、とAの頬を水滴が伝った。

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