【遊戯王VRAINS】空白アルビレオ２【藤木遊作】

勝敗より大切なモノ ページ16

デュエルは勝ち負けを決める為だけの道具じゃない、彼のそういうところが好きだ。

あの記憶を持つ人間はきっと、デュエルを道具として扱い、恐れるはずなのに。彼はそれでも前に進み、誰かを無意識に救って生きている。

Play makarの勝利を表すパネルとともに、二人は負けた財前の横を通り過ぎ、マザーバンク前へと足を運んだ。

｢Ai、思う存分食っていい｣

『ああっ！プレイメーカー様！今なんて？俺の名前呼んでくれた？』

｢Aiちゃんご褒美ずるい！帰ったら慰めてあげようと思ったけどやめます｣

『うわ、もしかして嫉妬？プレイメーカー様は俺に御褒美くれたもんね〜』

｢Aiちゃん嫌い｣

｢うるさい、早くしろ｣

その言葉を引き金にAiがデータを食いつくし、文字通り腹を膨らませたAiがデュエルデイスクの上で横になった。燕青はそれに近づき、彼のお腹を突っつく。ぷくっと膨れたシルエットは可愛らしいなと思うが所詮Ai。俺のボディに惚れちゃった？と、笑う彼に燕青は一気に興が引いた。

｢財前、この件からは手を引け。これ以上俺たちに関わるな｣

｢プレイメーカー、あの時ファイアウォールでダイレクトアタックをすれば君は勝っていた。それをなぜ…｣

｢ティンダングル・ハウンドとティンダングル・エンジェル。互いをかばい合う力を持つカードこそまさにお前と妹の化身そのもの｣

彼が静かに語る。Play makarは優しい。そんな優しい彼が燕青は大好きだった。目を細め、彼を一瞥し、燕青は財前兄妹の方を見る。Play makarの方は相変わらず無愛想で、燕青の隣に並んでいる。

｢そんなお前達が墓地になど眠っていてはいけない。俺の復讐に引きずられて闇に落ちる必要はない。お前達は光差す場所を歩いてくれ｣

｢…彼は君たちに傷ついて欲しくないだけだよ。君たちを僕達と一緒の地獄の底へは案内できない｣

笑った燕青に葵と晃は息を飲んだ。

燕青は彼のことになると、これまでの中で一等美しく笑う。

Play makarがどこからとも無く現れた道に、Dボードへと乗り移り、燕青を担いで去っていく。燕青にとってそれが思いもよらない行動だった。彼の肩を叩き、混乱しながらも財前たちに手を振る。あちらも彼の行動に困惑しているようだ。

｢なんで僕だけこんな格好つかないのさ！｣

｢大人しくしていろ｣

｢ぐぬぬ…。じゃ、じゃあね財前兄妹にゴーストガール！もう合わないことを祈るよー！｣

Play makarの背中と担がれた燕青がゆっくりと道に飲まれて言った。

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