稀代の鬼才の素敵な (ページ1)

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原初一話ページ1

太陽が寝静まって、月が天高くに光年前の光を放ちながら僕たちを眺めるような夜。

その月光に目もくれずほんのりと道を照らす様な街灯すらない闇夜道を駆けてく人影が一つ。

その足には刺激を守るような靴は無く、素足のままであった。しかし、人影はそれにも臆することなく走り続けていた。

そして、今の道よりも更に暗く淀んだ路地にその身体を隠す様に逃げ込んだ。

かたかたと震える四肢を必死に抑え込み、息を殺す。先程までいた道には身を隠した影を引きずり出そうと目論むようなくすんだ光が行き来している。

この時幸運な事に今まで唯一の光となっていた光年前の月光が重く厚い雲に隠され、影は夜闇に溶けて見えなくなった。

｢んなぁあああああ！！煩い！｣

ガシャンと激しい音を立てて先日作ったばかりの試作『超絶冴えるめざまし3機』が中身をバラバラにして、砕け散った。めざましはどこか寂しそうに叫び自らを投げた人物を眺めるが、そんなことはお構い無しである。

一瞬で嵐のような激しさを模した今は、澄み切った水蒼で包まれたような静けさと爽やかさに変わり、彼はその空気の中解けるように再び夢世に身を投げようとするが。

それを防ぐば、もう一人の少年の朝の仕事と言うべきだろうか。

｢てﾝめぇええええまた壊したのか！それ！！｣

水蒼に包まれた空間は一時にして破裂して元の空気に溶け込んだ。そんな空気の事もお構い無しにずかずかと入り込んでくる少年。布団にくるまった彼に近付き、その布を剥いだ。

｢んああああああ寒い！キィ！何をする！｣

｢何をする！じゃねぇよ！またせっかく作ったその目覚まし壊しやがって、少しは学べよ！｣

キィと呼ばれた少年はしゃがみ込むと悲しく散らばっためざましの臓器を拾い上げる。先程騒音を激しく鳴り散らした奇械はもう命の音を鳴らすことは無い。

｢今日はユーシェンさんが朝早くから診療所に来いって言ってただろ！？なのにお前は…｣

キィという少年がくどくど説教を続けるが、そんなものはお構い無しと先程剥がされた布団をもう一度取りに行こうとする彼、ファンクビート。一切少年の話なんぞ聞いてはいない。彼こそは、希代の鬼才の素敵な大天才。ドクターファンクビート…、自称シャオロン一の医者である。

朝の時は目まぐるしく回転をし、素早く過ぎていく。

その回転に巻き込まれた一夜の色をしている歯車が彼らに混ざり廻るのは少し待ってから。