遠くの街としあわせと・・５(なれそめ・高木家編)街シリーズ(５)

＝雄也くん・１０＝ ページ10

「たかきくんっっ。」

僕は、おっきな声で言うの。


たかきくんは、ビックリして

「うおっっ。ど、どーした。
　っつか、濡れるって、伊野尾っ。」


ぐいー。ってたかきくんに剥がされながら

「ねぇ、たかきくん。たかきくん。」


「おお、何だよ。」



僕はぺたんと座り直して

少しうつむいて・・

「た、たかきくんは・・
　僕の事、可愛いって‥思ってくれるの？」


「へぇ？？」


「んと。僕・・キモくなぃ？うざったくなぃ？
　ぶさぃくじゃ‥なぃ？」


「ちょ〜い。おいおい。どーしてそー思う？
　ネガティブだな〜。どーした。」


「ん。‥だって・・クラスの女子が言うの。
　僕に‥ゆーの。・・女子、こあぃ。」


「こあいって。怖いだろ‥
　しっかし、いちいち可愛いな、伊野尾は。
　言う事なす事可愛いから、やっかんでんだろ。
　ホントはよ。‥見た目も姫みたいだからさー。」


「姫・・？お姫さま？」


「おお、そー。お姫様。
　つーか、やっかんでる女子、マジ怖ぇなっ。」


「ん。こあぃ。」


「あ。今も可愛いなー伊野尾。」


「あっ。また言った。
　かわいーって言ったっ。」


「言うだろ。可愛いんだから、お前が。
　可愛いもんを可愛いって言って何が悪いっ。」


「んふふ〜〜〜。」


「何だよ、また笑って。」


「んふふ。ホントにパパみたい〜。
　パパはね、僕が小さい時ね・・ずっと
　ずーっと言ってくれてたの。可愛いね。
　慧が一番可愛いねーって。でもー・・」


「でも？」


「ん。でも‥最近は、言わないけろさー。」


「言わないけどが‥“言わないけろー”か。
　ふふ。マジ可愛いな。」


「あ。また言ったっ。うふふ〜うれしー。」


「嬉しいのか。」


「ぅん。うれしーよ。てれるけろー。」

「あ。また、けろ〜つってんな。
　ホント可愛いよ、伊野尾は。中身も
　見た目もさ。見た目なんて、白くて
　白雪姫みてーじゃん。な、伊野尾。」


「そんな‥白雪姫だなんて・・
　僕、そんなちゃんとしたお姫さまじゃないよ。
　僕は・・僕はニセモノのお姫さまだもん・・。」


「っんな事ねぇーだろっ。＿＿＿ふふ。大丈夫。
　大丈夫だ、慧は可愛いよ。ほら、慧＿＿＿。」

たかきくんがおとなりで

優しく手を広げてくれるの。


優しい声で、小さい時聞いたパパみたいな声で

「ほら、慧。抱き締めてやるよ、来い。」


「たかき・くん。」


「濡れてもいーんだろ？」

「んっ。いーのっ。
　ありがと、たかきくん。」

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