遠くの街としあわせと・・５(なれそめ・高木家編)街シリーズ(５)

＝雄也くん・１７＝ ページ17

「・・ありがとぉ・・
　たかきくん。木村せんせぃ‥。」



たかきくんは、申し訳なさそうな顔して

「慧、ホントにごめんな。
　昨日‥海岸行けなくて＿＿＿＿
　転校の手続きに時間掛かっちゃって。
　ホント、マジごめんな。」



「んーん。」僕はふるふる。と首をふって

「‥いーの。だって＿＿＿＿
　だって、こうして来てくれた。
　たかきくんが来てくれて‥僕、うれしぃぃ。」


「なぁ、慧。慧はやっぱり
　ニセモノのお姫様じゃなかったろ？
　こうして、王子が救いに来てんだからさ。」


「んふふ・・。ぅん。」




木村先生が、肩を揺らしてゲラゲラ笑って

「雄也、お前が王子って柄かよっ。
　やっさぐれた王子だな。」


「うっせーな、拓哉さんっ。」


「お前はアレだ。アレ。
　点を付けろ。点付けて、玉子だ。たまごっ。」


「うっせっ。うっせーよっ。
　拓哉さん、静かにしてろって。
　今、イイ感じなんだからさ〜〜。」


「イイ感じって、雄也。
　お前＿＿保健室で、イチャこくでねぇーっ。」


「イチャこくでねぇーって、何語だよっ。
　イチャこいてねぇっつーの。なぁー慧。」


「んふふ・・。
　うれしぃ。僕に王子さま‥いたの。
　んと‥んっと。波乗り王子さま、ありがとぉ。」


「っんだよ＿＿＿っ。
　慧、マジお前、可愛いな。」


「あ。また・・かわいーって、いった。
　んふふ。」

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿



伊野尾慧、中学２年生。

僕の‥終わりのない真っ暗闇の世界が

中２の９月から一変した＿＿＿＿＿＿。




真っ暗闇だった僕の世界が

眩しくて、ぽかぽかと温かい

陽だまりのような明るい世界になった。




僕の。僕の波乗り王子さまが

救い上げてくれたの。




たかきくんは行動派で、すごいんだよ。

その週の、偶然パパが帰って来た日に

僕のおうちに来てね‥

ギクシャクしてた僕とパパの仲を取り持ってくれたの。



パパは僕を、ぎゅぅぅぅっと強く抱き締めて

嬉しそうに泣いていた。




次の日ね、パパがまたお仕事で

遠くに行っちゃって・・さみしかったけどー

へいきだったのっ。



だってー。だって僕には王子さま。

んふふー。波乗り王子さまがいるんだもんっ。




今日は〜、学校終わって、夕方。

たかきくんが僕のおうちに遊びに来たの。


保健室では、木村先生がいるけろー

僕のお部屋では、ふたりっきりー。


僕、ちょっぴしどきどきー。


「んっとー。・・はい、たかきくん。どうぞー」

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