[wrwrd]赤に溺れる６ (ページ29)

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大抵この男は、常人の思考回路には理解できない感性を持っていた。
趣味が悪いと言えばそうだし、＿＿否、一等手っ取り早い言い方をすれば、常軌を逸しているのである。

そうでなければならない、と言う所は、ある。
抑も国などと言うのは、一人間に背負わせるにはあまりにも重たすぎる。それを平然とした顔して頂点に立ち続けるというそのこと自体が、常人の神経では不可能だ。

然しグルッペンの『常軌の逸し方』は、＿＿当然上に立つべき人間として備わった狂気を除いて＿＿完全に、『戦争屋』のそれであった。

残念ながら、この野郎、と悪態をついているトントンにしても、そういう気はある。
だからこれは、傍から冷静に判断してみれば団栗の背比べであり、五十歩百歩であり、要は棚に自分を上げた言い方であった。

「否あ楽しくなってきたぞトン氏。こんな事はいつぶりだか、否初めてかも知れん。『バク』とかいう猟奇犯が適当な国に引っ張られてこういうことを引き起こしているとしても面白いが恐らく違う、只一人の女を狙っていると言う訳だ！俺たちはその障害だから攻撃するか！」

ふッはははは、と、グルッペンは低い声を暴れさせるように笑った。
邪悪も良い所だった。国の上と言うより悪役と言う方がよく似合う。

「あの女、澄ました虫も殺せないような顔でとんだ傾国じゃないか！なあ、トントン！」

ゲラゲラと大変楽しそうな彼に、トントンは素直に顔を歪めた。明らかに引いている、と言う表情である。

「笑いごとで済ますなや……」

一頻り笑い切ってしまってから、彼はふとその笑みを消し＿＿真剣な色を見せる。

「否、然しこれはいい機会だ」

トントンはその表情に、一度表情を引き締め直して彼を見やった。

「この国の軍旗を永遠にこの地に打ち立てるためには、俺だけに頼るこの城塞のやり方はよくない」

グルッペンがずっと＿＿内内、考えていたことであった。
彼の赤色尖晶石(レッドスピネル)は大いなる未来を、＿＿自身が消えてしまうその先をすら、見据えていたのである。

だから彼は幹部を増やして多角的な強さを手に入れたし、今も尚革新的な制度を発案しては採り入れ続けている。
然し、この城塞の防備だけは＿＿そうも言っていられなかった。

＿＿＿グルッペン＝フューラーの能力は、それほどまでの強さを誇っていたから。

「例えこの国の幹部全員が一気に斃れても、要塞としての機能を果たす防御力」

を、彼はずっと求めていた。