[wrwrd]赤に溺れる６ (ページ28)

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こうなると、愈々手詰まり感は否めない。
抑もグルッペンの能力が、＿＿早い話が、強すぎたのである。

そしてそれを中心に城塞の防衛を展開している。

これ自体は、別段可笑しな話でもない。グルッペンに依存した形ではなく、当然、＿＿例えばひとらんらんの能力を生かすために広大な庭を作って見せたこと＿＿他の幹部たち、或いはそれに頼らない防衛システム自体は存在する。

然し、グルッペンの力が余りにも圧倒的であったために、彼の能力に大いに頼る形になってしまった。
これは合理的な判断であり、ある一つの欠点にも＿＿なった。

その欠点こそが、現在存在感を放っているのである。

＿＿＿要を握るグルッペンの能力が、通じないと言う事。
これ即ち＿＿城塞の大きな部分の防衛システムの機能が、通じないという意なのだ。

「でな」

「まだあるんか……何や？」

トントンがうんざりした顔になっていると、グルッペンは、

「異能の攻撃があったんが瀬名Aって話はしたな？で、ぺ神がそれについて多少探りを入れてみたそうだ。……答えは、」

＿＿＿No。
つまり、本人は、何か違和感を感じてはいなかった。

「……ゾムも言うとったな」

トントンは表情筋を中心部に寄せた顔になった。

ゾム、＿＿つまり、『バク』の能力を受けた者＿＿の、証言。

「……『能力が解けるまで、自分の行動にも精神状態にも、違和感を感じなかった』」

逆に異能の効力が抜けてしまってからは、その時の自分の異常性は振り返れば痛いほど理解できる。
例えばそれは、狂人が自分の狂っていると言う事を理解しないこと、＿＿或いは、夢が醒めてしまうまでは、その夢が可笑しな内容であることに気付かないこと、そういうものに、似ている。

＿＿＿。

「……それはつまり逆に言えば、」

「あの子が異能にかかっとったとして(・・・・・・・・・・・・)、それに気づくことはない(・・・・・・・・・・・)ってことか？」

トントンの静かな声が、部屋を支配する空気に乱反射する。
それがやけに響くように二人に感じられたのは、あまりに厳粛な＿＿と言う言葉では、重苦しさとこの無機質な切り詰めた色は表せないようにも思うが＿＿静寂が、あったからかもしれない。

「……そうなると、拙いな」

流石に、と言うような、グルッペンの表情は。＿＿

＿＿＿＿＿嗤って、いる。

(……楽しそうな顔しやがって、この野郎)

トントンは静かな溜息を零す。