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そしてこの話の変わり方は、暗雲の立ち込めてくる方向へ、であった。
「……城内に入り込まれとるんか？」
トントンは眉間に深い皴を刻み込みながら言う。
グルッペンは「まあその可能性もあるな」と、否定はしない。
「城内におるんやったら未だいい。異能の使用を許してしまっているとはいえ直接的な対峙になるし、捕縛できる確率は高いからな。……只」
「……ああ」
唸るように、トントンは頷く。
「異能者本体は外で、其処から攻撃を飛ばしとる場合が排除できん」
最悪のシナリオ何て言うのは、幾らでも生まれてくる。
人間は恐れる生き物である以上、恐怖心からの妄想はむくむくと湧き上がって留まる事を知らぬ。
それを、合理的な立証によって排除していくだけの胆力と知力が必要とされているとも、言える。
然し今回のケースは＿＿＿話が、やや違っていたのである。
「警備強化するとか言うても、抑もこの城塞の警戒レベル事態基本的にレベルMAXっつっても過言ではないやろ……」
「ぺ神の『眼』をかけるか？ ガチガチに防御に全振り」
「いつぞの大戦争以来やンけ……」
たかが正体不明の猟奇殺人犯に、此処まで国の上が頭を悩ませることになろうとは。
しかしまあ、この件を警察部＿＿ゾムが元締めをやっている部署である＿＿だけが抱え込むことにならなかったのは、幸か不幸かと言った所だろう。
実際、このレベルの異能者がゴロゴロと其処らに居られては堪らない。
「ひとらん先生は？」
「んー、ひとらんはちょっと
＿＿＿ひとらんらんの、異能。
それは、明確な意思を持って行動しないもの＿＿彼の場合はその殆ど全てを『植物』に当てはめている＿＿に、彼自身の意思を与えることで、本来行動しないそれらに自律的な行動をさせることができる、と言うものだ。
だから例えば、彼が庭で侵入者を見つけ、「あれを捕まえたい」と言う意思を植物に伝播すれば、植物たちは勝手に動いて侵入者を捕縛しにかかる。
ひとらんらんは基本的には大変気性の穏やかな男で、花を育てたり小動物の世話をやったりする。そう言う場所を荒らされれば怒るが、この怒りにはこういう、
「いざと言う時、万全の状態ではなくなる」
と言う事への焦燥も、あった。
「狂犬組は攻撃にほぼ全振り。エミさん＿＿も、奇襲か。……」
トントンは溜息と一緒に、「あ”〜……」と呻いた。
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作者名：遥彼方 | 作成日時：2021年5月8日 20時
