[wrwrd]赤に溺れる６ (ページ26)

今日:2 hit、昨日:12 hit、合計:24,493 hit

２６３ページ26

彼の反応は至極真っ当だ。此処で内々に処理すべきか、と言われるとそうでもない事態だが、余計な動揺を誘いかねないという面もある。

……だからグルッペンは暫くの沈黙を選んだのだという辺りの心の動きも解り、トントンはやや黙考する。

「箝口令を敷いて、その上で『上』だけで共有はする、として」

慣例を踏襲した形であるが、これがやはり一等巧く行きやすいのである。
『上』と言うのは、最高幹部＿＿つまり、早い話が『身内』＿＿だ。

「……その後、どうするか、なんよなあ」

と、トントンは遠い目になった。

「気張りつめて待ってりゃ気づくんだが」

実際それで今回は押し返したし、とぼやいたグルッペンに、

「保(も)たんやろ」

と、トントンは切り捨てるような速さで言った。

実際、グルッペンに＿＿こんな事で(・・・・・)神経擦り減らして衰弱されては困るのである。彼は、この国の国家元首で、始まりであり、礎で＿＿この国の大いなる要だから。

「……つっても、この広域を警戒できるんはグルさん位やしなあ……」

と、トントンは渋面になる。
グルッペンの異能は＿＿正直、規格外も良い所であった。

「トントンの異能進化出来たら何とかなるかもしれんゾ」

「いい加減にしろォ、できる訳ねえだろうが！」

例え自分の異能がどれほど進化したとして、グルッペンのような広域を満遍なく守ることは絶対に不可能だろう、＿＿と、トントンは極めて現実的な見方を持っている。

グルッペンは「いけるいける」などとふざけた口調であったが、彼の本心は半ば本気でもあった。

「さて。今回の問題は二重になる訳だが」

グルッペンは気を取り直すように、机の上で指を組んだ。

＿＿彼の言う『二重』と言うのは。一つは、『バク』の手から彼女を守れてもいないし、その尻尾を掴むこともままなっていないという現状の事。
そして、そういう部外者の攻撃が、＿＿この城塞に、通じてしまっていると言う事。

「ゾムの事やけど……あれが外で受けた(・・・)んやったら、まだマシではあるんやけど」

「ああ。今回の事で、城内で受けた可能性も出て来た」

＿＿味方最大の脅威と称され、内外より恐れられる、この国でも圧倒的な戦闘能力の高さを持つゾムが、『バク』により精神干渉を受けていた。
彼の場合は、一所に留まらず其処彼処に向かうことが多いから、城外で異能を受けたという見解が多かった。

が、こうなると、話が変わってくる。