[wrwrd]赤に溺れる６ (ページ11)

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ティーポットを机の上に残して、エーミールさんは去っていった。
……気を使わせたと言う事だろう。

その意図を察して居心地悪さにも似た申し訳なさを覚えつつ、首に巻いてくれていた赤いマフラーを丁寧に取った。そして遠慮もなく水気を今尚含んでいる服を脱いだ。

用意してくれていたタオルで、素肌の湿り気を取っていく。
そして、置いてくれている着替えに手を伸ばし、するすると着替えた。

タオルを肩にかけ、もう一度タオルドライを試みる。
片手でそうしながら、思ったよりもかなり長いマフラーを手にした。

乾かす所、……。

そう思った所でエーミールさんの事を思い出し、慌てて去っていった扉を細く開けた。

彼はいなかった。
出ていますね、と言う言葉通り、本でも取りに行ったのかも解らない。

それが彼の心から来たものなのか、私を気遣ったものなのかどうかも、解らなかった。

取り敢えず扉を細く開けたまま、暖炉の前に戻った。
ぱちぱち、赤い炎に身を焼かれ、薪が爆ぜている。

「、……」

……火焔は、苦手であった。
それは紛れもなく私の経験から来るものなのだと思うのだが、パニックを引き起こしたりしないからこれでも随分マシな症状なのだろうと思う。

それはあの時の事をよく覚えていないからかもしれないし、或いは。……

とにかく、彼らの心遣いを無下にしてしまうようなことがないと言う事だけは、安堵していいだろう。

炎に照らされるマフラーを見つめ、何とか干す事はできないだろうかと思案する。
水気を含んでしまってそのまま乾かすのは忍びないので何とかしたいという心持はあるのだが、今の私に何ができるのかと言うと首を捻ってしまう。

マフラーが縮れたり伸びたりしてしまわないように気を配る事位しか、差し当たりできることはなさそうだった。

何とか取り敢えず干してしまおう、エーミールさんならまだ的確なことを思いつくかしら、そんな事を考えていると、細く開いた扉の隙間が、滑らかな蝶番の音と共に広がる。

其方を反射的にゆるりと見やると、やはりエーミールさんがいて、真珠のような瞳を細めてにっこりした。

「今、紅茶を淹れますから」

時間を計算していたのかもしれない。
そんな事をふと思って、茶葉の蒸らす時間を考えた。
被せられた布を見つめ、体感時間を加味すると、少し渋くなったかなあと申し訳なくなった。

「ミルク、砂糖、レモンは如何です？私からは、ミルクをお勧めしますが」

やはり、と思う。