逆光 kn ページ1
高校デビューを失敗し、見事に地味なクラスにいる大人しいひとりになってしまったあの頃。
キミは、キラキラと輝いていてまるで太陽のようで大勢の人が見つめた。すぐそこにいるのに手を伸ばしても届かない、雲のようで。夏の眩しい太陽のようなキミに憧れて見つめる人は多く、多くの向日葵が咲いていた。
中でも自分のようなあまり目立たない美しく咲けていない花は見てもらえないと、そうわかっていたのに。
一年生の夏休み、悪い事だとは理解していてそれでも憧れだった夜のプール。中学までは親の目が厳しく夜の外出なんか許されなくて。1つ歳をとって何が変わるのかなんてまだわからなかったあの時。
夜、外に出ることは自分にとっては大冒険で。なんとか忍び込んだ学校にキミがいた。夜に見る太陽は、普段と違った魅力があり見惚れてしまった。
じっと見つめているとキミが振り返ることに気づいてしまい隠れようと急ぐ。
「誰かいるの」
隠れるのが間に合わなくて見つかってしまったようで。恐る恐る体を出す。きっとキミは自分になんて興味なんかなくて知らないだろうけど。それでも、憧れだから。
「Aさんだよね」
自分の名前を呼ばれて顔を上げる。まさか自分の名前を知られているなんて。
『えっと、覗き見するつもりはなかったんです ごめんなさい』
謝罪を口にすると綺麗な青空のような目をパチクリとさせて、笑う。
「別に怒ってなんかないよ そんなところにいないでこっちに来たら？」
手招きされて、そばに駆け寄る。プールサイドに腰掛けて隣り合い座る。
昼間、水泳部が使うためだろう水が貼られたそこに足をつける。
無言の時間が続く。
どちらから声をかけたわけでもなく見つめ合う。
キミの瞳を見ているとこの思いさえも見透かされているようで、目をそらしたくなる。でも、なぜだか逸らせなくて。顔が近づく。
一時の間違いのような、雰囲気に流されたキスをした。
触れるだけのそんなもの。一瞬のことだけれど、長い時間に感じる。きっとキミは、何人ものこと多くやってきたのかもしれないが、自分にとっては思い出だった。
夏が過ぎ秋が来る。キミとの距離は縮まっていた。
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作者名：トンカチ | 作成日時：2023年8月31日 4時
