隣と隣の隣 (ページ9)

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隣の隣の女の子ページ9

亮平side

今年から赴任先が変わり、引っ越したマンション。

1Kで社会人にしては狭い気もするけど、大家さんも良い人そうだし、管理人さんも気さくな方でなかなか住みやすい。

住み始めて直ぐに苗字が同じだと気付いた隣の隣に住む人。

しかし都会のマンションではご近所付き合いもないし、どんな人なんだろう？と頭の片隅で気にはなっているものの、なかなか会うことはなかった。

新しい職場にも慣れてきて、梅雨のジメジメを感じた頃、空室だった隣に人が入り、その人もまさかの阿部さんで驚いた。

隣の隣を気にすることも少なくなっていたけど、三軒並んでいるとなるとやはりどんな人なんだろう？と気になってしまう気持ちが再燃した。

暑さとの戦いが厳しくなってきた7月下旬。

休みで図書館にでも行こうと出かけて帰ってきた時だった。

俺が階段を登りきったタイミングで開く306のドア。

そこから出てきたのは若い女性で、俺に気付くことなく鍵を閉めた。

ぼーっと見ていたのがバレるのも良くないと思って挨拶をした。

急に声を掛けてしまったせいで、女性は少しビクッとしてこちらを見た。

こんにちはと返してくれたその女性はそのままそそくさと俺の横を通り過ぎる。

亮「すみません！」

すれ違ったその後ろ姿をつい呼び止めてしまい、その行動に自分でも驚きながら立ち止まってまた振り返ってくれた女性に言葉を続ける。

亮「すみません、呼び止めてしまって…あの、ここからあっちまで阿部が並んでますよね…。あっ！僕304の阿部なんですけど…。」

何言ってんだと自分で思いつつもそう言うと、女性もハッとした様子で答えてくれた。

「あ！あぁ！そうですよね、並んでますね！びっくりしますよね！」

亮「これからよろしくお願いします。よかったら仲良くして下さい。」

そう言った俺にこちらこそよろしくお願いしますと言ってくれた。

それからまた会釈を交わして女性を見送り、自分も家に入る。

306の阿部さん…女性だったんだ…

というか、仲良くしてくださいってなんだよ、ご近所付き合いも無いのにおかしい人だと思われたかも…

そう思ってちょっとだけ凹んだ。