隣と隣の隣 (ページ47)

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駅の方から電車の音が聞こえ、ざわざわと音が近づいてきた。
改札の方を振り返ると私が降りた時と同じくらいの人の数が次々に改札から出てくる。

その中に亮平くんがいた。

亮平くんは、改札を出てパスケースをカバンに入れ、顔を上げてすぐに私に気付き、笑顔で駆け寄ってきてくれた。

スーツ姿、ビジネス用のシンプルなデザインのトートバッグ。
似合う。

亮「遅くなってごめんね？」

「ううん、大丈夫。お仕事お疲れ様。」

亮「ありがとう。本当はもう一本早い電車でくる予定だったんだけどね…ギリギリになっちゃった。」

そう言いながらスマホの画面を見せてくれた亮平くん。
13時56分。

「遅刻じゃないから何も問題ないよ。」

私がそう言うと、ありがとうと言ってポケットにスマホを入れ、行こうか、と水族館の方を指差した。

亮「Aちゃん、今日の服もかわいいね。」

「え、ありがとう。季節の変わり目って服すごく悩んじゃうし、変じゃないかな？って思ってた。」

亮「全然変じゃないよ。スカート履いてるの、新鮮でちょっとドキッとしちゃった。」

そうか、普段仕事ではもちろんパンツスタイルだし、これまで偶然会った時もパンツスタイルの時ばかりだったんだ、と思う。
今日は膝下丈のスカートに長めのカーディガンを合わせてきた。
はっきりとかわいいなんて褒められて、照れてしまう。

「亮平くんのスーツ姿、仕事前にパン買いに来てくれる時も思ってることなんだけど、すごく似合ってるね。」

亮「えー？なんか照れる。」

そう言って笑う亮平くんを見ながら、少しだけ緊張がおさまってきた気がした。

亮「あ、ちょっと待ってねー。」

水族館に入る前に立ち止まった亮平くんに合わせて私も立ち止まる。

亮「あったあった。はい、これ。」

そう言って渡されたのは水族館のチケット。

「え？」

亮「人が多かったら、と思って先に買っておいたんだけど…人全然いないね。」

亮平くんは最後の部分だけ少し声を落として言って笑った。

「あ、じゃあお金…。」

と私が財布を出そうとするとやんわり手を押さえて止められる。

亮「俺が誘ったんだもん、今日はカッコつけさせて？」

「いいの？」

亮「うん。ほら、早く行こ！」

そう言う亮平くんにありがとうと伝えて水族館へ。