隣と隣の隣 (ページ36)

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305の… ページ36

照に告白されたものの、照は言っていた通り態度を変えることも無く、今まで通りに働けている。

でも、今まで意識していなかったことを私が意識してしまうことは多々ある。

重いものを運ぼうとすると代わりに運んでくれるとか、自分のと一緒に飲み物を買って来てくれるとか…。

今までは、なんで照はこんなに優しいんだろ？って思っていたくらいだったのに、告白されてからは、その優しさの一つ一つが好意からくるものだと意識してしまって、動揺してしまうこともある。

そんな私を見て照はなんだか満足げ。

意識してよ、って言った照の言った通りに意識しているからだと思うけど…。

それ以外は特になにも変わったことは無い。

亮平くんが仕事前にパンを買いに来てくれたのは素直に嬉しかった。

亮「このお店のパン食べたら他のとこ行けなくなるよね。」

なんてこれ以上ないほどのお褒めの言葉付き。

そしてあの飲み会から一週間が経った土曜日。

今日も特になにも無く一日が過ぎていくと思っていた。

お店をオープンしてすぐ、カランカランとドアベルが鳴り、いつも通り常連さんの元気な女の子が来てくれたのだと思って入口の方を向いていらっしゃいませと声をかけた。

「あ、亮平くん…と……いつもありがとうございます。」

先に入って来たのは亮平くんだったけど、そのすぐ後ろから常連の元気な女の子が入って来た。

明らかに一緒に来た、と言えるタイミング。
まさかこの2人が繋がっていたなんて…。

え？もしかして彼女…？

照「あ、阿部じゃん！何、今日は彼女と？」

裏で作業していた照が表に出てきて亮平くんにそう言った。

亮「へぇ！？違う違う！！」

照の言葉に亮平くんは声が裏返ってしまうほどに焦った様子で否定した。

亮「あ、Aちゃん、紹介するね、こちら、305の阿部さん。」

「え！？」

亮「で、玲奈ちゃん、こちらがこのお店の店長さんで、306の阿部さん。」

玲「え！？お姉さんが306の！？」

「あ、はい…阿部Aです。」

玲「私は阿部玲奈！まさか私の大好きなパン屋さんがお隣さんだなんて！！信じられない！！」

「私も驚いてます。いつもご贔屓にしてくださっている方がお隣さんだなんて…。」

私も驚いたけど、照ももちろん驚いていた。
世間って狭いんだな…なんてぼそっと呟いていた言葉に全くだと思った。