隣と隣の隣 (ページ4)

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突然声をかけられても気の利いた事を言えるタイプではないし、とりあえず笑顔で対応することだけを心掛ける。
マスクをしているから大袈裟に目元を意識しないといけない。

304の阿部「これからよろしくお願いします。よかったら仲良くして下さい。」

阿部さんはマスクをしていてもにこやかに言ってくれてるのが伝わる言い方でそう言った。

「あ、はい…こちらこそよろしくお願いします。」

目元と声のトーンに気を付けて、まぁ仕事の時の要領でそう返して、では、ともう一度会釈をして背を向ける。

後ろから、阿部さんが家に入るためにドアを開ける音が聞こえてチラリと振り返ると、本当に二つ隣の部屋へ入って行った。

304の阿部さん、背が高かったな…

私より若い感じかな？男性の年齢って見た目じゃわかりにくくて難しいよね…

でも感じのいい人で良かったな…

眼鏡かけてたし、真面目そうだったな…

唐突に出会ってしまった304の阿部さんのことを思い出しながら、目的地へと向かうためにバス停を目指した。

特に用もなく適当に行ったショッピングモールでは買うものもなく、スーパーで食品を少しだけ買って帰ってきた。

お風呂も済ませて髪を乾かしながらふと304の阿部さんのことを思い出す。

これからよろしくとか、仲良くしてくださいとか言ってたな…
私は私で突然声をかけられて緊張したけど、もしかしたら阿部さんも緊張してたのかな？

いくら話題がないからって今後ほとんど会うこともないだろう人に仲良くしてくださいって言っちゃうなんて、結構天然な人なのかも？

そう思うと少しだけ可愛く思えてしまう。

隣の隣の阿部さんを知ったとなると、隣の阿部さんも気になるぞ、という気持ちが生まれてきた。

隣の阿部さんはどんな人なんだろ？

今後出会うことあるかな？