隣と隣の隣 (ページ14)

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パン屋巡りページ14

亮平side

次の休日はパン屋巡りをしようと決めたあの日から、この日をめちゃくちゃ楽しみにしていた。

そう、今日は休日。

どのパン屋さんから行こうかな？とスマホを見ながら考えるがふと気づく。

巡ると言っても一人じゃそんなに食べられないし、何軒も回るとかは無理じゃないかと。

だから俺は休日の度に一軒ずつ回るしかないと思った。

Aさんのパン屋さんを探すという点では、時間のかかる非効率的なやり方だけど、こうするしかないし。

もし見つけられるまでにAさんに会うことが出来たなら、その時は直接聞こうとも思っている。

それくらいあのパンを気に入ってしまった。

今日も暑そうだな、と思いながら服を着替え、休日用のトートバッグに、財布と今では必需品となったエコバッグを入れる。

まだまだおさまりそうにない感染症のせいでつけ慣れたマスクをして、家を出る。

と同時に隣のドアも開いた。

亮「あ、おはようございます。」

？「あ！阿部さんでしょ！？おはようございまーす！！あたしもだけど、あたしの両隣が同じ阿部だなんてびっくりしちゃった！！」

いきなりすごい勢いでそう言ってきた隣の阿部さんは、Aさんよりも若そうで、見た目はだいぶ派手。

最近街でも見かけるようになったおへそが見える丈のTシャツに短パン。

夏だからと言ってそこまで露出するのはいかがなものか…と思う。

？「あ、あたし阿部玲奈って言います！玲に奈良の奈だかられいなって言われがちだけど、れなだよ！！お隣さんは？」

亮「あぁ、阿部亮平と言います。」

玲「亮平さんね！よろしく！どっか行くの？私はゴミ捨て！」

そう言って手に持ったゴミ袋を揺らす。

亮「えっと…パン屋に行こうと思って…。」

玲「え！？パン屋！？どこの！？」

亮「この近くあんまり知らないから適当に行ってみようかなって。」

なぜそんなに驚くのかと思いながらそう言うと、玲奈さんはにこにこしながら、だったら、とちょっと俺に近付いてきて、その勢いに戸惑う。

玲「だったら“エトワール”が絶対オススメ！！ここから近いし、どのパン食べてもめちゃくちゃおいしいよ！！今朝私も行ってきた！！」

亮「“エトワール”…。」

玲「うん！行ってみて！！じゃあね！！」

そう言ってゴミ捨てに行った玲奈さんの後ろから、俺も歩き出し、マンションを出た。