隣と隣の隣 (ページ2)

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私が三連続阿部に気付いてから一週間くらい経ったある日、エントランスでたまたま大家さんに会った。

こんばんはと挨拶をして、いつものようにポストを確認する。

大家さんもポストを確認していて、一瞬の沈黙。

大家「そう言えば、阿部さん三軒並んで…ねぇ？」

突然そう話しかけられた。

「あ、そうですよね。私も気付いてびっくりしました。」

私も笑ってそう答える。

大家「僕もびっくりしたし、不動産屋の人とかも驚いてたよ。」

にこやかにそう言う大家さん。
やっぱり珍しいことですよね、と私も笑い返す。

いつ会っても大家さんは穏やかな人だなぁと思いながら、良きところで話を切り上げて失礼しますと家に帰る。

やっぱり珍しいことなんだ…って思いながらいつものように階段を上る。

気付いた次の日に一緒に働いている照に話した時もめちゃくちゃ驚いてたな…

なんなら絶対嘘じゃん、とか言ってなかなか信じてくれなかったし。

嘘だとしたらなんでそんな嘘つくんだよって感じなのに。

その日はその話で結構盛り上がったなぁと思い出す。

照「は？阿部が三軒並んでんの？」

「そう、びっくりじゃない？」

照「絶対嘘じゃん！そんなことある？」

「嘘じゃないし！」

照「まぁ珍しい苗字って感じでもないしな。俺の友達にも阿部っているし、そういうこともあるか…？にしても珍しいな。」

「気付いたときしばらくポスト前で立ち止まっちゃったもんね。」

照「そりゃそうなるわ。」

その辺りでお客さんが来てくれたからその話は終わったけど、その後も度々隣の阿部って人とは会ったことあるのか、隣の隣の阿部って人とは会ったことあるのか、と照に聞かれ、どちらも会ったことはないと答えた。

同じマンションに住む人に偶然会うことはもちろん時々あるけど、同じ階の人とかましてや隣の人とたまたま会うことって滅多にない。

そう言うと照も確かにそうだなと納得していた。