トライアングル (ページ2)

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2話ページ2

たった一年。されど一年。あの頃の私達は今よりもずっと幼稚で、無知だった。愛し方なんて分からなくて、知らないうちに傷つけることしかできなかった。

無機質なチャイムの音が耳に入る。ああ、そうだ。遅刻ギリギリだったから走ってたんだっけ。すっかり忘れてた。遅れたからもういいや。朝のホームルームは出ずに一限が始まる前に教室に入ればいい。のんびりとした足取りで校舎に向かって足を進める。大きな敷地、綺麗な校舎。将来やりたいことが特に決まっていない私は、進学にも就職にも便利なこの雄英高校の普通科に入学した。クラスはC組。ヒーロー科の名門なだけあって先生もプロヒーローだ。

「おはよう苗字。遅刻なんて珍しいな」
「おはよ心操。間に合いそうだったんだけど、ぼーっとしてたらいつのまにか時間経ってた」

なんだよそれ、と少し笑った心操。
心操とは隣の席で、なんだかんだ気が合って最近よく話すようになった。いい奴だと思う。

　夕方18時過ぎ、遅刻をしたことを担任にしっかり注意されたあと、友達と適当に街を回って帰宅した。

「ただいまー」
「おかえりー」

今日の晩ご飯はカレーよ、というお母さんの言葉をそこそこに聞き流しつつ部屋に行く。
友達に借りてた本返さなきゃな、と思い机の引き出しを開けると懐かしい写真が目に入った。

私と緑谷と爆豪は中学二年の時クラスが同じだった。爆豪はクラスの中心的な存在で言葉遣いも態度乱暴だったが、よく取り巻きに囲まれていた。対照的におどおどしていて無個性、しかも爆豪に嫌われていた緑谷はクラスでの立場も酷く、限られた人としか話さなかった。2人は幼馴染らしい。

「懐かしいな……」

写真に映った2人を見て呟く。
もう、一年も前のことだ。私がまだ、折寺中学の制服を着ていた頃。
視界の端に映る、オールマイトのぬいぐるみ。もう一度写真を見る。

「ばかだよねえ」
その写真に写った三人の学生。
不機嫌な顔をしてカメラを睨む爆豪。
照れたようにカメラに笑いかける緑谷。
そんな2人の間にいる私。

2人の仲が悪いのも知っていたけど私が無理やり撮った写真。
このときは嫌がる爆豪を私が引っ張ったんだっけ。緑谷も最初は怖がってたけどちゃんと映ってくれて。

2人ははこの写真、もう捨てたかな。
叶うなら、なにも知らないこの頃に戻りたかった。