6 ページ28
お風呂入って来な？
そう言った彼に素直に頷くと脱衣場に向かう。
一通り洗い終えてリビングに戻ると彼は勝手にテレビをつけてニュースを見ていた。
「上がった?」
『うん』
「おいで」
その言葉に引き寄せられるように彼の座るソファに腰掛ける。
髪はまだ濡れているが自分以外の人が部屋にいることに慣れていないからか、どこかソワソワとして急いで出てきてしまった。
「貸して、」
肩にかけられたタオルが優しく抜き取られ頭を覆うと柔らかく水分を吸収される。
『、、、なんかお母さんみたいだね？』
まだ彼をあまり知らないけど行動の節々に世話焼きさを感じてしまい笑いが漏れる。
「お母さんはやだな、」
下を向いているから見えないけど彼も笑っているようだった。
『一緒に寝るならお風呂入って』
彼が気が済んだようにタオルへの力を抜いたことを感じて立ち上がるとクローゼットから着替えを出して渡す。
「これ、」
『ん、私変なところが潔癖だから。お風呂入ってからじゃないとベットに入りたくないの』
部屋は汚くても平気なんだけど
「いや、そうじゃなくて」
『ん？』
「これ誰の?」
私が差し出す燻んだ緑色の派手なスウェットを眉を顰め嫌そうに指差した彼にこれしか無いのにどうしようかと考える
『お兄ちゃんのだけど嫌だった?これしかないんだけど』
「あぁ、あの人か」
緊張感が緩んだ空気
『、、、知ってるの?』
「前に迎えに来てもらってたでしょ？」
たまに職場まで車で迎えにくる兄は結構目立つ見た目をしているから知っているのか
『見てたの?』
「うん。俺たぶん思ってるより知ってるし、見てるよ」
その言葉と共に着替えを受け取った彼は手を上げて私の頭に優しくポンポンと落とすと
「早く乾かしな？」
シャワー借ります。
と言って脱衣場へと向かって行った。
『うん、危険だね』
1人になった部屋で落とされたその言葉は他でもない自分に向けられたもの
よく分からない感情をかき消すように彼のスーツの上着に手を掛けバンガーを通した。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 464人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「NCT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ともともも(プロフ) - ろみさん» コメントありがとうございます！沢山褒めていただいて何回も読んでニヤニヤしております。深夜に読みたくなる話がコンセプトなので分かって頂けて凄く嬉しいです！今後も頑張ります！ (2022年8月14日 12時) (
レス) id: 01f45e17e6 (このIDを非表示/違反報告)
ともともも(プロフ) - moon_shineさん» コメントありがとうございます！テイルさんの雰囲気はすごく試行錯誤したのでそう言って頂けて凄く嬉しいです。何回も読んで頂けるなんて本当に有難いです。こらからも頑張ります！ (2022年8月14日 12時) (レス) @page34 id: 01f45e17e6 (このIDを非表示/違反報告)
ろみ - 「灰緑よりも良質な眠りで包んで」拝読しました。すっごく素敵なお話でドキドキしながら楽しませていただきました。ともとももさんの作品の文体・雰囲気の美しさが好きです。深夜に読むとムードが増していいなと思っています。今後の更新も楽しみにしていますね！ (2022年8月13日 1時) (レス) @page23 id: 30195dc62b (このIDを非表示/違反報告)
moon_shine(プロフ) - ムンさんの空気感？雰囲気？が解釈一致でなんか、、、すごくリアルにムンさんを感じてしまいきゅんきゅんしました。いつもとても素敵なお話をありがとうございます。また何回も読ませて頂きます。好きです。 (2022年8月9日 12時) (レス) @page16 id: db76fff5c7 (このIDを非表示/違反報告)
ともともも(プロフ) - ふるさん» コメントありがとうございます！どちらも思い入れのある話なので好きと言って頂けて頭抱えて喜んでいます。またテンくんの作品にも挑戦しようと思っているので覗きに来てください！更新頑張ります、これからもよろしくお願いします！ (2022年8月7日 0時) (レス) id: 01f45e17e6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ともともも | 作成日時：2022年6月4日 12時
