雨が降り私は歌う [KZ] (ページ16)

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#fifteen ページ16

『んっ』

私はベットに身を放り投げた

頭に灰色の煙がもくもくと広がる

息が出来ないぐらいに

お客さんの…そらるさんのあの"目"

大切なものをまた見つけたような目

愛しくてたまらないものを見つめるような目

初対面の人に向ける目ではなかった

今覚えばまふさんだってそらるさんと同じ目をしていた

思い出せない

嫌

思い出したくもない…？

いつかな上杉君が言っていた

"やる気は出せないものでは無い"

"頑張れば絶対出せるものだ"

って

でも今の私は頑張る気力さえもない

思い出したくもないんだ

"ほらまた"

誰かが私の頭に囁く

"前だってそうだったじゃん"

頭が割れるように痛い。

”やめて”ただそれだけしか頭になかった。

"結局は自分の事しか考えてなかったんじゃない？"

そんな訳ない

だったらママと同じ

"変わり者だねあんたは"

いいの

変わり者でも

"貴方なんかに生きている意味なんてあるの？"

『やめてっ！！！！！！』

気づけば泣いていた

ガバッと勢いよく身を起こす

大きな声が響いた

『やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてっ！！！！！！』

頭を手で抱えこむ

生きていいなんて

一番私が

分かんないんだよ

｢彩っ！！｣

誰かがふわりと私を包み込んだ

涙でぐちゃぐちゃになった顔を上へと向ける

『まふ…さん？』

まふさんは私を強く抱きしめた

今にも泣きそうな顔で

｢落ち着いてください｣

真っ黒だった世界に色が彩り始めた

｢息をゆっくり吸ってください彩｣

まふさんはさっきより強く抱きしめてくれた

強くでも優しくぎゅっと

心の霧が少しずつ晴れる

｢彩｣

前から声が聞こえる

少し低めででも落ち着く声が

｢頑張ったな｣

あの時と同じようにそらるさんは愛しげに私を見つける

まふさんと同じ顔で

ポンッと頭に手がのる

優しく暖かい手は優しく私を撫でてくれた

『ごめん…なさいっ』

"覚えている"

この温もりも

優しさも

覚えている

『ごめんなさいっ！』

まふさんもそらるさんも何も言わずに私を抱きしめてくれる

この2人は雨だ

優しく私を照らしてくる

私の大切な雨だ