3.ごめんね ページ4
「いやね?あいつら、コンビニで万引きしようとしてたみたいで。ちょっと注意しただけなんだけどねぇ。なんか突き飛ばされちゃって」
「え、お兄さんのほうこそ大丈夫なんですか。怪我してません?」
「ん、俺は大丈夫よ。体強いからね!それより本当に大丈夫?俺、けっこうな勢いでぶつかっちゃった気がするんだけど」
「大丈夫ですよ。なんともありませんから!」
痛む手首を押さえながら、平気そうに笑った。
話を聞くにお兄さんが悪いわけではないし、怪我をしたなんて言えばさらに気をつかわせてしまいそうで、申し訳なかった。
それに多分大したことない。
これくらい放っておけばすぐに治るだろう。
そう思いながら地面に落ちた袋を拾おうとしたら、手首にズキっとした痛みが走った。
「いっ……!」
痛みに顔を歪めると、相手が焦った様子でこちらを心配し始める。
「っ、やっぱり怪我してない?」
「あぁいや、ちょっと痛みますけど……本当に大丈夫ですから!お兄さんじゃなくてあの人たちのせいなんですから、気にしないでください」
「だとしても悪いよ。ごめんね、何かお詫びさせて?」
そう言うと、彼はポケットに手を突っ込んで何やら財布のようなものを取りだした。そしてごそごそと中身を確認したあと、「あちゃー」と独り言をつぶやく。
「うーん、あんまりお金入ってないか」
「!?……あの、お金とか出さなくていいですからね!?」
「いやいや、勝手かもしれないけど俺の気がすまないからさぁ。こんな可愛い子に怪我させといて、じゃあ気をつけてねバイバーイ!なんてできっこないって」
ちょっぴりとがった歯を見せながら、へらへらと笑うお兄さん。
まさかお金の話を持ち出してくるとは思っていなかったため、私は一気にパニックになる。
そこまでして詫びようとする彼への申し訳なさと、この状況をなんとか穏便に切り抜ける方法を必死に考えて、頭の中はぐるぐる。
このままじゃいけない。ただの事故なのに、お兄さんにお金を払わせるなんて。そんな、そんな……!
「わ、わかりましたっ」
「んぇ?」
手元の財布に落としていた目線をこちらに向けて、彼は素っ頓狂な声を出した。
「あ、明日。私と一緒に、ご飯行きましょう!!」
「…………え?」
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作者名:うみうし | 作成日時:2023年12月17日 22時